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title: "ブリッカで上等なエセカプチーノを作る"
date: 2022-10-26T14:26:42+09:00
draft: false
tags: ["food"]
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![](/img/160.jpg)
僕はもっぱらコーヒーをハンドドリップで淹れている。言うまでもなく僕にとって最高の抽出法だからだ。フレンチプレスやらサイフォンやらに色々と手を出しても結局はハンドドリップに帰ってきた。これこそが王道の味に違いない。淹れ方はいくつあっても構わないが、王は一人いればいい。ところがそんな王者でも絶対に叶えられない味わいがある。
そいつはカフェラテだとかカプチーノだとかいう気取ったイタリア野郎の顔をしている。やつらは下地にエスプレッソを使う。エスプレッソは圧力をかけて抽出する特別に濃厚なコーヒーゆえ、ハンドドリップでは逆立ちしても同じ濃さにはならない。普通のコーヒーにミルクを注いでも、それはカフェラテではなくカフェオレと呼ばれる。土台となる苦味が足らないからか、カフェオレはどうあがいても中途半端な味わいに留まってしまう。
では、如何にすべきだろう? フレンチプレスやサイフォンを試した時のように、エスプレッソマシンを買うべきか?――そんな芸当はさすがに難しい。値段が高すぎるし、置き場所もとる。エスプレッソこそが王だと思う人には当然の処遇でも、僕にとって王じゃないやつがキッチンにデカい顔をして居座っているのはすこぶる気に食わない。毎日飲むわけじゃないし。
電動ミルの問題もある。いま使っているミルはKalitaの[ネクストG](https://www.kalita.co.jp/products/nextg.php)という製品だが、誠に遺憾ながらエスプレッソ挽きには対応していない。民生用ではフジローヤルの[みるっこ](https://fuji-royal.jp/products/mill/r220/)と並んで圧倒的な粒度品質を誇る事実上のフラグシップモデルとされているのに、細かく挽くことだけはできないのだ。ハンドドリップを王に戴く僕には適した製品とはいえ、多少の口惜しさは否めない。
つまり、本物のエスプレッソを淹れたければマシンのみならず、専用のミルをも揃えなければいけない。**一体何諭吉かかるんだ。** いくら道楽でも限度はある。エスプレッソ欲しさにそこまで肩入れするのは王への叛逆ではないか。僕はそんな不埒な真似はできない。だがしかし、美味しいカフェラテやカプチーノは是が非でも飲みたい……。
実を言うと[今までにも偽物のカプチーノはさんざん作ってきた。](https://twitter.com/riq0h/status/1447781961154453511)コーヒーにミルクだけだとただのカフェオレでも、ミルクをもそっと泡立ててやるとちょっとマシな雰囲気に仕上がる。僕はこれを**エセカプチーノ**と名付けて密かに愛飲していた。本物のカプチーノには手が届かなくても、せめてこいつをもっとアップグレードしてやれないものだろうか。
そこで[マキネッタ](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9)という器具を思い出した。電気ではなく直火で圧力をかける簡素なエスプレッソメーカーである。安価ゆえ本物のエスプレッソほど重厚な味にはならないが、それでもエスプレッソっぽい味はするらしい。**ならば、カプチーノの下地には十分では……?** しかも、僕が初めて見聞きした頃よりもだいぶ改良が重ねられていて、ビアレッティとかいう老舗メーカーの「ブリッカ」とやらはかなり本格的だと言う。
とりわけ大きい利点が、マキネッタ用の挽き目はエスプレッソ挽きより粗くて済むところだ。直火の蒸気圧は電気より小さいため細かくしすぎるとうまく抽出できないからだが、ともかく既存のミルで使えて、なおかつ安く済む……。これだ、これしかない。僕はさっそく2カップ用のブリッカをヨドバシの電子カートに叩き込んだ。
使い方は一度覚えてしまえば至極単純だった。まず底部の容器にだいたい100〜120mlの水を注ぎ、内部の皿に挽いたコーヒー豆を平坦にならしつつ入れる。次に上部の部品を装着してきつく締める。そうしたら火にかけるだけだ。豆の分量は16gくらいでぴったり収まった。深煎りでなければたぶんもっと要る。カフェラテやカプチーを作る前提なら、同時にミルクを鍋か電子レンジで温めておくと無駄が少ない。火加減は底面からはみ出ない程度がちょうどいい。
![](/img/161.jpg)
なぜ経験則で語っているのかと言うと、付属の説明書のテキストがこんなひどい有様でとてもあてにならなかったせいだ。100年以上の歴史に彩られた老舗メーカーでも説明書の翻訳は苦手らしい。今時、AliExpressの零細中華業者だってもう少しまともに読めるテキストを寄越してくれるぞ。
![](/img/162.jpg)
火にかけて3分もするとマキネッタが騒ぎだす。じきにエスプレッソが抽出されはじめるので、予めコンロのスイッチに手を置いておくことをすすめる。僕自身、この記事を書くまでに何度も淹れたが未だ明確な基準は見つけられていない。火を止めるのが早すぎれば抽出不足だし、遅すぎれば沸騰したエスプレッソがあふれ出してコンロを漆黒に染めあげる。他方、成功した場合は下の動画のようにいかにもエスプレッソ然としたクレマができた状態で落ち着く。
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あとは温めておいたミルクを加えるなり、泡立てるなりする。ただ加えたならカフェラテ、泡立てればカプチーだ。泡立てるにはミルクフォーマーが必須だが実は100均でも売っている。僕はセリアで買った。エスプレッソとの比率は、3:7あたりが適当とされている。2カップ用のブリッカの抽出量はおおむね70〜80mlなので、必要なミルクの分量はおよそ160〜180ml前後となる。
そして、肝心の味はといえば……**これがめちゃくちゃ美味しい。** はっきり言って、表参道のキ◯ネカフェで飲んだラーメン並に高いカフェラテにも引けをとらない。[まあ、ラテアートの技量は認めてやらんでもないけど。](https://twitter.com/riq0h/status/1545632889194561536)こんな話はエスプレッソを王に戴く人々からすれば悪辣な僭称、権威の簒奪に他ならないだろうが、僕の王はハンドドリップのコーヒーなのでぶっちゃけこんなんで全然構わない。エセカプチーノ万歳。
![](/img/163.jpg)
## 後日談
アフォガードっていう素敵なスイーツにハマった。アイスクリームをエスプレッソに浸して食べるのだが、苦味と甘味のコントラストが絶妙すぎて1カップ分のハーゲンダッツが秒で消える。まぢで。
![](/img/164.jpg)