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title: "ローファーのつま先"
date: 2025-01-14T20:20:42+09:00
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tags: ['diary']
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なにかの比喩ではない。本当にローファーのつま先の話である。[前回](https://riq0h.jp/2024/12/04/173617/)の精神的続編。ナンバリングタイトルを付けると客離れが起きるので新作を装うやつ。最近はローファーのことばかり考えている。靴に興味がなくても学生の頃に履いていた人は少なくないだろう。靴紐いらずで気安く履けてどんな服装にも合う革靴のありがたみを、特に夏場にはよく実感させられる。
なにしろ日本の夏は蒸し暑い。アメリカやイギリスの気候とはとてつもない隔たりがあり、この地でトラッドな装いを貫くのは苦行に等しい。ポロシャツにチノパンのよくある組み合わせにしてもストレートチップが似合うほどのフォーマルさには及ばない。したがって、おのずと環境に合わせて革靴の方をカジュアル寄りにする必要が生まれる。
現状、僕の今の手持ちでカジュアルなのは[スタンスミス](https://www.adidas.jp/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9-decon-stan-smith-decon/IE9117.html)か[チロリアンシューズ](https://www.scotchgrain-shop.com/category/405/87DBR.html)か[ワークブーツ](https://www.keenfootwear.jp/collections/mens-work/products/mens-san-jose-6-waterproof-boot-aluminum-toe-tortoise-shell-star-white)だ。ワークブーツは基本的に雨用かウォーキング用なのでそう頻繁には使わない。となると日常的な選択肢はスタンスミスかチロリアンしかない。どちらもお気に入りではあるものの手数に欠ける構成だと言わざるをえない。せめてもう一つ選択肢が欲しい。
そこでローファーを投入する。控えめのシルエットでジーンズからスラックスまで無難に合わせられる。主に春夏用を見込んではいるが冬も全然使える。というわけで、さっそく東京駅から有楽町駅あたりまでの空間を行き来しつつ品物の選定に入った。あの辺りは割と徒歩で回れるし、都市景観を眺めているだけでも退屈しないから嬉しい。
![](/img/356.jpg)
まず初めに履いたのはイングリッシュタイプの明るいローファーだ。ローファーにはざっくりイングリッシュとフレンチの2種類が存在していて、見ての通り前者はつま先が細長い。クインクラシコの丸の内店で履いてきたが、果たして実物の印象はあまり芳しくなかった。
というのも、見てくれがややキザっぽい。これと釣り合うのは全身からエネルギーが迸っているようなタイプの人ぐらいだ。白のセットアップを堂々と着こなし、なんなら胸元をはだけさせて顔にはサングラス、そして声がよく通る。そういう朗らかな紳士のみが履きこなせる。そんな印象を受けた。やはり汎用性が高いのは黒のローファーのようだ。
次に向かったのはスペインブランドのBerwick。ここも丸の内に直営店がある。ホスピタリティが抜群で試着コーナーの椅子が永久に座っていられるほど座り心地が良い。あと試着待ちをしている間はコーヒーがタダで飲める。この店で試したのはフレンチタイプだ。モカシンブーツ並みに丸みを帯びていて立体感が強い。学生が履くローファーはだいたいこういうつま先をしている気がする。
![](/img/357.jpg)
履いた姿を鏡に映した感想としては、なかなか良いと思った。まさにコーデの黒子役と言える。靴自体に華やかさはなくても他が引き立つ。100年前に室内履きとして生を受けて以来、ずっと怠け者loaferの烙印を押され続けてきたにも関わらず、今日に至るまでトータルコーディネートの下支えを任されているのはなんとも興味深い。
とはいえ、誠に残念ながらこの靴は僕の足には合わなかった。くるぶしの辺りが強く当たってめちゃくちゃ痛い。つま先や踵の当たりは革が伸びていずれ解消されるにせよ、くるぶしの周りはそうはいかない。実は昨年、まったく同じ理由でスタンスミスの[FREIZEIT](https://www.adidas.jp/%25E3%2582%25B9%25E3%2582%25BF%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259F%25E3%2582%25B9-freizeit-stan-smith-freizeit/ID1385.html)を手放したばかりだった。
服はサイズさえ合えば一応着られるが、靴はサイズが合っていても履けない場合がある。言わずと知られた大原則に消沈しながら有楽町に徒歩で向かう。最後に訪れたのはスコッチグレインの銀座本店。結局、ここに来てしまうんだな。すでに同ブランドの靴を2足持っているので、あらかじめ自分の足に合うことが分かっている。
![](/img/358.jpg)
このローファーはイングリッシュとフレンチの中間に見える。伝統的なイングリッシュほど細長すぎず、フレンチと異なりシルエットが薄い。鏡の前に立った時の主張感もほどほどでバランス感に優れている。履き心地も申し分ない。できれば他のブランドを開拓したかったが今回もスコッチグレインになってしまいそうだ。
学生の頃、若かりし頃は都市の背景が書き割りに見えた。当時はパーカーとシャツぐらいしかろくに服を持っていなかったので、商業ビルのテナントの大半を占める服飾に関心を抱けなかったのだ。それがアラサーに達してからこっち、あたかも刷新されたオープンワールドのゲームみたいに周囲の建物が急速に攻略価値を備えはじめた。
別に銀座や丸の内が変わったわけではない。彼らは100年前からずっとこういう雰囲気でやってきている。変わったのは僕の方だ。いつからか身に着けるもののシルエットやテクスチャの魅力に取り憑かれた。非合理的かもしれないが、どこか奇妙な充足感がある。
![](/img/359.jpg)
おまけ。今年の春夏はジーンズも頑張ってみるつもりだ。流行り廃りに無縁で長持ちするものには投資しておきたい。色々と探してみた結果、[JAPAN BLUE JEANS](https://www.denimlabo.com/c/japanbluejeans)を検討している。それにしてもユニクロの3倍高いエドウインより2倍高い国産ブランドがたくさんあるとは驚いたな……。