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title: "攻めの間食"
date: 2024-04-08T21:00:34+09:00
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tags: ['poem','food']
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それにしても腹が減る。僕は毎日ご飯のことを考えて生きている。朝ご飯を食べながら昼ご飯に食べるものを考え、昼ご飯の時は晩ご飯のことを考える。時計の長針が一周するたび、胃袋が蠕動してしきりに集中をかき乱す。一体、なんでこんなに腹が減るのだろう。
待ちに待った食事時。地下牢から脱獄した直後かと見紛う切迫感を抱えつつも、なるべく時間をかけて食べようとする。よく噛むのはもちろん健康のためでもあるが、そうしないとすぐに腹が減ってしまうからだ。なによりせっかくの食事をあっという間に済ませてしまうのは惜しい。
そのはずなのに、僕の食べ終わりはかなり速い。この頃は特に速くなっている。一般的な分量の定食を食べるのに10分くらいしかかからない。ラーメン二郎を食べている時も似たりよったりの時間で食べ終わるので、よほどの猛者がいなければ同じカウンター列の中で真っ先に席を立つ場合が多い。
明らかに僕は飢えている。いつも腹が減っていてご飯のことばかり考えて過ごしているからがっついてしまうし、がっついて人より速く食べるから満腹中枢がいかれている。そして結果的にすぐ腹が減る。絵に描いたような悪循環だ。この負の輪廻を打ち砕かなければ僕はずっと思考リソースの一部をご飯に捧げ続ける羽目になる。飽食の文明社会に暮らしていながら、どうして僕だけがこんな原始の暮らしをしなければいけないんだ。
ふと、毎週月曜日の朝に欠かさず乗っている体重計の数字を見やる。体重はおおむね61kg前後を推移している。体脂肪率は15%台。20kg近い減量に成功してからすでに5年以上が経過した。運動の習慣はもはや歯磨きと同等レベルで日常に組み込まれ、今さらやめる理由はどこにもない。リバウンドのリスクは皆無と見ていいだろう。
ならば、そろそろ検討してもいいのではないか? **俗に言う、間食というやつを。** 長年封印し続けたあの邪悪な文明をあえて再興せしめ、秩序と引き換えに停滞した僕の肉体にほどよい刺激を与えてやるのだ。ぼちぼち空腹が満たされていれば、もっとゆとりを持って食事を楽しめるに違いない。思考リソースをより本質的な事柄に割けるに違いない。虚空に向かって同意を求めると、Amazonが「はい」と答えてくれた。
## 無塩アーモンド&くるみ
間食を解禁したからといってコンビニスイーツとかを買っていてはしょうがない。そりゃあ、コンビニスイーツはおいしい。ほぼ全国どこにでもある店で、高度に均質化された食品があの値段で手に入るのは現代科学の結晶と言うほかない。菓子パンも、ケーキ類も、どれもこれも実に大したものだと思う。
だが、あれらのパッケージの裏面に記された情報が目に入ると、たちどころに夢から醒める。誠に遺憾ながら、どんなに技術が発達しても過酷な原始の環境を生き延びてきた人間の遺伝子を騙すまでには至っていない。所詮、人間を虜にさせるのは糖分、塩分、油。値段が安いのならなおさらそれは避けがたい。
さらにこういった代物は大抵柔らかくて食べやすい。食べやすいということはすなわち、瞬時に食べ終えられて腹に溜まりにくい特性を持つ。にも拘らずおいしいのだから、一個や二個では当然物足りなくなる。それでは困る。僕はあくまで現行の肉体の秩序を守りたい。邪悪な文明に実権を委ねたくはない。
どうせ日々間食をするならついでに得もしたい。僕が求めているのは「攻めの間食」だ。普段の食事で摂取しづらい栄養素をここで得る。逆に、なるべくなら糖分も塩分も油も控えめの方が望ましい。それでいてなおかつ、食べ飽きない程度においしくなければならない。僕の答えは、ナッツ類だった。その中でもアーモンドとくるみを選択した。
この二つはどちらも十分に噛みごたえがあって、味わいもそれぞれ違う。前述の栄養素も申し分ない。特に食物繊維の量は目を見張るほどで、僕はこれを食べはじめてから便通で悩んだ覚えがない。玄米食や麦飯が嫌な人でもナッツならそんなに悪くはないだろう。よく噛むと感じるほのかな甘みはコーヒーにも合う。
しかし、ナッツ類は天然食品かつ嗜好品ゆえ値段は決して安くない。スーパーで小刻みに買うとかえってコスパが悪いので、いっそ買うなら1kg単位で買うことをおすすめする。僕も最近知ったのだがカリフォルニア堅果の[アーモンド](https://www.amazon.co.jp/dp/B073TX2Z55/)と[くるみ](https://www.amazon.co.jp/dp/B018ICIF26)は競合製品と比べてもっとも安く、品質も非常に良かった。
## りんご
言わずと知れた青森の絶対君主。かの地が日本政府ではなく実質彼らに統治されていることは世界的にもよく知られている。医師が推奨する食べ物ランキングでも常に上位の座をほしいままにしている。ちなみに1位はトマトだ。確かにトマトの栄養素はすごい。だが、腹を膨らませるのなら断然りんごに軍配が上がる。
このりんごを、僕はあえて丸かじりする。皮には食物繊維が豊富に含まれているし、丸々持っていけばかさばらない。そう、自分の座席の前でおもむろにこいつを取り出して食べるのだ。日本ではまだ見慣れない光景かもしれないが西洋諸国ではごく当たり前である、などと言い張り欧米信仰の徒を懐柔せしめるのも忘れない。実際のところは分からない。僕は間食を邪魔されなければなんでもいい。
語るまでもなく、1個のりんごから得られる満足感は相当なものだ。午前9時頃に食べておけば昼までなんとか持ちこたえられる。やたら照度の高いオフィスの光を受けて輝くこの果実はさながら神の化身のようであり、種々の神話や伝説においてりんごが特別な地位を占めているのも大いにうなずける。青森県民が自ら主権を明け渡して彼らに仕えていることにも道理を認めざるをえない。
## いか足
ところで、無塩アーモンドのカロリーは10粒あたりだいたい100kcal、りんごはサイズにもよるが150kcal前後と言われている。両者の栄養素は理想的とはいえ、気兼ねなく食べていいかと問われたら厳しい。そこで、どうしてもなにかを際限なく食べずにはいられなくなった時に備えて保険を導入しておく。いか足である。
周知の通りいか足のカロリーは極めて小さい。にも拘らず、味が濃くて人生の終わりまで噛んでいられそうな食べごたえがある。引き換えに栄養面については諦めてもらうほかないが、少なくとも腹持ちの良さにおいては先のカリフォルニアや青森の君主をも上回る。
しかしながら、扱いには少々注意を要する。ロハスで先進的で洗練されたオーガニックフードの印象を持つアーモンドやらくるみやらりんごやらとは異なり、いか足からは赤羽・北千住の匂いが漂う。いやいやこれは西洋諸国ではなどと見え透いた嘘をつく間もなく、六本木・渋谷の軍勢に排撃せしめられるのが関の山だろう。よって、職場で食べるのはさすがにおすすめできない。
## おわりに
全部食べてたら2ヶ月で2kg太った(  ・_・  )