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父は仁王立ちで怪訝そうに睨んでいたが、家の前のパトカーが遠ざかる音を聞くやいなや「ふん」と鼻を鳴らした。それでいて明らかに気が緩んだ態度で口元を折り曲げた。「税金で食ってる連中は気楽なもんだな」そう言う父は祖父の財産を食いつぶして暮らしていた。
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父は仁王立ちで怪訝そうに睨んでいたが、家の前のパトカーが遠ざかる音を聞くやいなや「ふん」と鼻を鳴らした。それでいて明らかに気が緩んだ態度で口元を折り曲げた。「税金で食ってる連中は気楽なもんだな」そう言う父は祖父の財産を食いつぶして暮らしていた。
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その後、しばらく本には困らなかった。星新一の短編集は一冊あたりの分量こそ少ないが、ゆうに30冊以上もの巻数がある。短い夏休みが終わり、さらに短い秋が駆け足で通り過ぎても星新一を読み続けることができた。一寸、実体を得たかのように見えた背景はたちまち元の平坦さを取り戻し、代わりに僕の世界はますます奥行きを増してどこまでも広がっていった。
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その後、しばらく本には困らなかった。星新一の短編集は一冊あたりの分量こそ少ないが、ゆうに30冊以上もの巻数がある。短い夏休みが終わり、さらに短い秋が駆け足で通り過ぎても星新一を読み続けることができた。一寸、実体を得たかのように見えた背景はたちまち元の平坦さを取り戻し、代わりに僕の世界はますます奥行きを増して厚みを帯びた。
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やがて、心の中に強固なマイ国家が築かれた。何人にも決して侵されない脳裏にはにぎやかな部屋が作られ、そこには時に暗く明るいひとにぎりの未来があった。ところで、この日記には重大な嘘が含まれている。一つだけとはかぎらないし、最初から最後までまるごと嘘という顛末も大いにありえる。
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やがて、心の中に強固なマイ国家が築かれた。何人にも決して侵されない脳裏にはにぎやかな部屋が作られ、そこには時に暗く明るいひとにぎりの未来が広がっていた。ところで、この日記には重大な嘘が含まれている。一つだけとはかぎらないし、最初から最後までまるごと嘘という顛末も大いにありえる。
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