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ある日、僕も参加している合同誌企画の場で刃傷沙汰が起きた。彼がまさにコメディ作品を投下せんとしていた、その時だった。寄稿者の一人がカッターナイフを取り出して彼に襲いかかったのだ。突然の出来事に誰もが動けないでいた。けが人は、一人だけ出た。加害者である。
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彼の筋力によってあっという間に制圧せしめられた加害者は、ねじりあげられた腕を捻挫したとかなんとかで全治二週間の怪我を負った。互いに法的な手続きをとらなかったため表沙汰にはならなかったが、曰く「身を守りたかった」と襲撃の理由を述べていたと言う。だが、彼は件の人物とはろくに話したことがなかった。
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彼の筋力によってあっという間に制圧せしめられた加害者は、ねじりあげられた腕を捻挫したとかなんとかで全治一週間の怪我を負った。互いに法的な手続きをとらなかったため表沙汰にはならなかったが、曰く「身を守りたかった」と襲撃の理由を述べていたと言う。だが、彼は件の人物とはろくに話したことがなかった。
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大勢がおちょくられ倒していた部屋の中で、彼が「いっぱいいっぱい」であろう、と判断した人間だったのだ。一件落着を経た後の彼はわずかに表情に翳りを見せて「ちょっとしくったな」とつぶやいた。彼はもう作品を書いていない。その瞬間、僕は曖昧模糊としていた基準の一端を垣間見た。以来、おちょくられるがままにしている。
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