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「リザちゃんのお父さんは?」
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「リザちゃんのお父さんは?」
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「……同じだよ。とっても、優しかった」
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「……同じだよ。とっても、優しかった」
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「いつか会えるといいね」
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「いつか会えるといいね」
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イタリア戦線の状況は聞いている。
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イタリアも大変だと聞いていた。王様に嫌われたムッソリーニ首相が、フューラーに助けられて北の方に新しい国を作ったという。新しい国にはまだ兵士の数が足りないので、代わりに我が国の軍隊が居候している。イタリアとドイツは友達なのでこういう時は助け合わないといけない。
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リザちゃんが我が国に「セッシュウ」されて来たのも同じ頃だ。できればイタリアで戦いたかったみたいだけど、偉い人たちはもっと難しい作戦を考えているのだと思う。実際、彼女がいなければドイツもどうなっていたか分からない。
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「そうね、いつか」
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それきり、会話はぶつ切りに途絶えて固く締まった土を踏む音が響いた。たまに、遠く彼方の方角に戦闘機らしきプロペラの高周波音と、戦車のキャタピラが草木をすり潰す重低音がかすかに聞こえる。
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私たちは黙々と歩き続け、川の水を汲んでは飲み干し、また歩いた。相変わらずお腹は鳴っていてもポーランドが川の多い国だったおかげでなんとか我慢できている。人はなにも食べていないと三日くらいで死んでしまうけど、水を飲んでいれば二週間は生きられるらしい。
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夕方、森林に空が覆われている箇所を見繕って野宿の支度をする。暗くなってからだと薪を集めるのにも苦労するので明るいうちにしないといけない。もともと目の前が暗い私には関係ないけど、リザちゃんにはある。荷物は減っているのに気だるさが増す身体を懸命に動かして、辺りの木を伐採する。なんてことはない。前線の兵士と比べたら私たちはよっぽど楽だ。木をちぎりとるのも、火をつけるのも簡単に済む。リザちゃんが「そう、その辺り」と声で示した位置でぴたり、と人差し指を止めて「ぼっ」とつぶやくと、光の源が爆ぜて薪がぱちぱちと言う。灯りのありがたみが分からない私でも、焚き火の温かみを感じるとなんとなく安心できる。ソ連軍のまっただ中にいる間は寒さに身を震わせて眠っていた。
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「そういえば、コーヒーがあったわ」
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寒くなったのでたぶん今は夜なんだ、と思った辺りでリザちゃんが言った。旅行鞄からなにかを取り出した後、がたごとと音をたててインスタントコーヒーを作りはじめた。じきにぶくぶくとお湯が湧く音が聞こえたので、手を差し出して待っていると熱いコップがあてがわれた。
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顔にあたる湯気を吸い込むと、コーヒーの香ばしい匂いが鼻をくすぐった。
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「いい匂い……でも」
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ずず、と試すようにして慎重に口に含むと、たちまち言葉では言い表せない強烈な苦味が舌の上に広がった。
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「コーヒーってとってもおいしそうな匂いがするのに、どうしてこんなにまずいんだろう」
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焚き火の向こうでも
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