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彼は不定期に僕のブログや小説を読んでは感想をくれる。一例を挙げるとこんな感じだ。『まだ合同誌とかやってんだ笑笑(いくつかの絵文字)』つまり、今も相変わらずおちょくられている。そんなわけで僕は彼に誘われて会食に赴いた。たとえ残業続きでも家族サービスとジム通いを決して絶やさない完全無欠の彼の悩みは教育費だという。30歳にして一本越えの預貯金を持ち、資産運用をしていてもなお子息に十分な教育を受けさせるには心もとないとのことだ。
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僕の方といえば、特にこれといった話はない。それなりに効率性の高い仕事にありつけて物書きをするのに不自由がなければ構わない。45分のランニングでぼちぼち10km以上走れるようになった、とささやかな自慢話を漏らすと、珍しく彼は素直に感想を言った。「マジか。俺はそこまで速くない。すげえな」そりゃあ、その分厚い大胸筋を揺らしながら走るのは辛かろうよ。彼は笑う。
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僕の方といえば、特にこれといった話はない。それなりに効率性の高い仕事にありつけて、物書きをするのに不自由がなければ構わない。45分のランニングでぼちぼち10km以上走れるようになった、とささやかな自慢話を漏らすと、珍しく彼は素直に感想を言った。「マジか。俺はそこまで速くない。すげえな」そりゃあ、その分厚い大胸筋を揺らしながら走るのは辛かろうよ。彼は笑う。
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「合同誌、出たら俺にも一部くれよ」彼は言う。僕は即答する。「嫌だよ」頭の中では余分に一部もらう算段がついている。「ネットで変な感想を書いたらさすがに怒るからな」「書かねえよ。そもそもどこに書くんだよ」「ツイッ……Xとかさあ」「アカウントどっかいっちまったし」「そういえばそうだった」彼のXアカウントは10年前を最後に更新が止まっている。Facebookに仕事関係の付き合い、Instagramにご飯と夜景の写真を上げる以外にはSNS上で誰とも交流を持っていない。
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そして、僕が『ツイッター』と言いかけたのをしっかり拾い上げて「XでもTwitterでもどっちでもいいけどわざわざ言い直すやつらって(自主規制)」と、いつものおちょくりが始まる。僕がSNSで知り合った人々はきっと彼を嫌いになるまでに5分とかからないだろう。生まれついての水と油だ。誠に遺憾ながら僕たちは油の方に違いない。ヌトヌトヌメヌメしていて、火をつけるとよく燃える。
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そして、僕が『ツイッター』と言いかけたのをしっかり拾い上げて「XでもTwitterでもどっちでもいいけどわざわざ言い直すやつらって(自主規制)」と、いつものおちょくりが始まる。僕がSNSで知り合った人々はきっと、彼を嫌いになるまでに5分とかからないだろう。生まれついての水と油だ。誠に遺憾ながら僕たちは油の方に違いない。ヌトヌトヌメヌメしていて、火をつけるとよく燃える。
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そんな彼にも、意図しておちょくらない相手が少なからずいた。もちろん会社の上司や取引先相手にそういう真似はまずしないだろうし、彼の店員に対する細やかな気遣いにはこうして飲食を共にするたびに深く感心させられている。それとはまったく別に、当時、彼はおちょくろうと思えばおちょくれるのに、あえてそうしない時があった。
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