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程なくして、管制官から返事があった。
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<帰投を認める。再び我々に勝利をもたらす日を願って。ハイル・ヒトラー>
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<ハイル・ヒトラー>
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**一九四六年**三月四日、愛するお父さんへ。ミュンヘンは相変わらずひどい状態です。私の身体は穴だらけ、同僚の子もまた手足がもげました。けれど、へっちゃらです。だってどうせすぐに直るし、彼女の手足は木でできていますから。
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**一九四六年**三月七日、愛するお父さんへ。ミュンヘンは相変わらずひどい状態です。私の身体は穴だらけ、同僚の子もまた手足がもげました。けれど、へっちゃらです。だってどうせすぐに直るし、彼女の手足は木でできていますから。
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”一九四六年三月十日、愛するお父さんへ。昨月の今頃はまだ暖かったのに、このところめっきり冷え込んできました。ブリュッセルのお空模様はいかがでしょうか。本当はすぐにでも空を蹴って会いにいきたいのだけれど、あいにく私は上官の許可なくしては男の人の背丈より高く飛ぶことも許されていません。でも、管制官が仰るには戦争で華々しい勝利をもたらせば、私たちはアーリア民族の英雄として認められて、ようやく自由に過ごせるのだそうです。
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”一九四六年三月一三日、愛するお父さんへ。昨月の今頃はまだ暖かったのに、このところめっきり冷え込んできました。ブリュッセルのお空模様はいかがでしょうか。本当はすぐにでも空を蹴って会いにいきたいのだけれど、あいにく私は上官の許可なくしては男の人の背丈より高く飛ぶことも許されていません。でも、管制官が仰るには戦争で華々しい勝利をもたらせば、私たちはアーリア民族の英雄として認められて、ようやく自由に過ごせるのだそうです。
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チーン、とタイプライタが鳴り、ハンマーが紙面の端に到達したことを知らせてくれる。一旦、タイピングを止めて手探りで本体のレバーを引っ張り、改行する。
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”それにしても、まだ子どもの私が「上官」とか「管制官」とか言って、口にしてみたらずいぶんおかしい話に聞こえるでしょうね。今の私はなんでも帝国航空艦隊所属の中尉なんだそうです。私よりたっぷり三〇センチも大柄な兵隊さんたちが、前を歩くとさっと右、左に避けてくれるのが分かります。姿が見えなくても、足音でだいたいどんな背格好なのか分かりますから。”
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チーン。また、音が鳴った。再びレバーを引いて改行する。
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”一九四六年三月一四日。親愛なるお父さんへ。辞令でベルリンに移って三日が経ちました。まもなく東部戦線に行って参ります。ついこないだ中尉になったかと思えば、もう大尉になってしまいました。ベルリンに着任した管制官は、大佐だったのに今はもう准将です。相変わらず厳しい情勢ですが、頑張りが報われるのは嬉しいです。お父さんもきっと、ブリュッセルでイギリス軍やアメリカ軍を食い止めてくれているのでしょう。でも、くれぐれも銃弾には当たらないでくださいね。私と違って普通の人は治りが遅いですから。”
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”一九四六年三月一七日。親愛なるお父さんへ。辞令でベルリンに移って三日が経ちました。まもなく東部戦線に行って参ります。ついこないだ中尉になったかと思えば、もう大尉になってしまいました。ベルリンに着任した管制官は、大佐だったのに今はもう准将です。相変わらず厳しい情勢ですが、頑張りが報われるのは嬉しいです。お父さんもきっと、ブリュッセルでイギリス軍やアメリカ軍を食い止めてくれているのでしょう。でも、くれぐれも銃弾には当たらないでくださいね。私と違って普通の人は治りが遅いですから。”
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チーン。二段ベッドと小さな机と椅子しかない手狭な空間に、タイプライタの改行音が響く。
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”今日は、同僚のリザちゃんのお話を書こうと思います。彼女は私より一つ歳上のお姉さんで、イタリア人です。威張りんぼなところがありますがとてもいい子です。私と同じ、役目を持って生まれた子どもでした。私の目が光を映さないように、彼女は自分の手足が一つもありません。せめて格好だけでも普通にさせようとして家具職人の父が敷地に生えている木で義足をこしらえたそうですが、あいにくどんなに力を込めても動かすことはできません。”
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チーン。リザちゃんはまだ寝ている。二段ベッドの上の方ですやすやを寝息を立てている。私はむしろ下の方がよかったのだけれど、居室に着くなり彼女ときたら「私が上ね!」と宣言して梯子を昇っていったのだった。
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リザちゃんがそう言うか言わないか、頬にひんやりとしたなにかが触れた。途端に寒さが増した気がして、外套のボタンを全部留めて歩く。
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「積もれば水には困らなくなるね」
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ここにタイプライタはないけれど、もしお手紙を書くならきっとこんな感じになるだろう。
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”一九四六年三月一八日。親愛なるお父さんへ。このお手紙はお父さんのお手元に届く頃には少し湿っているかもしれません。というのも、今まさに雪が降っているからです。もちろん音もなく降りしきる雪の姿は私の目には映りません。肌をなでる冷たい感触が私に雪を感じさせます。昔、たくさん積もった雪をすくって食べていたらお父さんに叱られましたね。案の定、あの後にお腹を壊してトイレから出られなくなったのを覚えています。行軍中にそうなったら大変ですが、今では私もお姉さんなのでもうそんなことはしません。……”
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”一九四六年三月二〇日。親愛なるお父さんへ。このお手紙はお父さんのお手元に届く頃には少し湿っているかもしれません。というのも、今まさに雪が降っているからです。もちろん音もなく降りしきる雪の姿は私の目には映りません。肌をなでる冷たい感触が私に雪を感じさせます。昔、たくさん積もった雪をすくって食べていたらお父さんに叱られましたね。案の定、あの後にお腹を壊してトイレから出られなくなったのを覚えています。行軍中にそうなったら大変ですが、今では私もお姉さんなのでもうそんなことはしません。……”
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どこかで、チーン、と改行音が鳴ったような気がした。いやしかし、それにしては音程が変だ。そもそもこれは頭の中で書いているお手紙であって本当にタイプライタを叩いているわけでは……。
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私はすぐに他にも聞き慣れた音があったのを思い出した。これは銃弾が空気を切り裂く音だ。
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「敵だ」
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半ば呆れた調子で言うリザちゃんに私は自信満々に答えた。
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「うん、戦争が終わったら”たいぴすと”になるの。だからいっぱい練習しないと」
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「……そう」
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”一九四六年三月二四日。親愛なるお父さんへ。聞いてください。ついに私たちはやりました。見事、ソ連兵を打ち負かしてポーゼンの地を解放したのです。途中で初めての部下もできました。たくさん捕まえた捕虜も今は空いた建物に閉じ込めておとなしくさせています。今頃、ベルリンに向かっている他のソ連兵たちも、モスクワにいる共産主義者たちも大慌てしているに違いありません。私たちがここでひたすら持ちこたえていれば、必ずや他の魔法能力行使者や兵隊さんたちが反転攻勢を成し遂げてくれるでしょう。”
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”一九四六年三月二九日。親愛なるお父さんへ。聞いてください。ついに私たちはやりました。見事、ソ連兵を打ち負かしてポーゼンの地を解放したのです。途中で初めての部下もできました。たくさん捕まえた捕虜も今は空いた建物に閉じ込めておとなしくさせています。今頃、ベルリンに向かっている他のソ連兵たちも、モスクワにいる共産主義者たちも大慌てしているに違いありません。私たちがここでひたすら持ちこたえていれば、必ずや他の魔法能力行使者や兵隊さんたちが反転攻勢を成し遂げてくれるでしょう。”
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チーン。ほんの少しだけ音程の違う改行音が部屋中に響く。
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長かった作戦を無事に終えたご褒美に、私は外套の奥底からチョコレートを取り出して口に含んだ。じわじわと溶けだす甘みが私に束の間の幸福をもたらした。
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いつもの要領で上空から奇襲を仕掛ける。きゅらきゅらとキャタピラで雪を踏み鳴らして進む重戦車と、遠慮なしに金属音を立てる随伴歩兵らしき集団の輪郭が急降下に伴い明瞭に映り込む。魔法の砲弾を放ったと同時にUターンして空へ舞い戻る。地雷原で損耗した戦車の数を念頭に入れると、敵方の車輌はそう多くはないはずだ。
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いつもの要領で上空から奇襲を仕掛ける。きゅらきゅらとキャタピラで固い土を踏み鳴らして進む重戦車と、遠慮なしに金属音を立てる随伴歩兵らしき集団の輪郭が急降下に伴い明瞭に映り込む。魔法の砲弾を放ったと同時にUターンして空へ舞い戻る。地雷原で損耗した戦車の数を念頭に入れると、敵方の車輌はそう多くはないはずだ。
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<南側からも来るわ>
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「そっちはお願い>
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短く無線通信を交わして目の前の戦場と向き合う。ただひたすら、被弾を最小限に、応射を最大限に。一見、際限なく現れるように思われたソ連兵たちにも限りはある。上空からの砲撃に一段落を見出した後、四方に分散したであろう小隊の位置取りに見当をつける。今、私の右斜め後方で音がした。
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速やかに建物の縁から飛び立つと、入れ替わるように銃弾が元いた位置を掠めていった。軌跡を辿ったその先にステッキを振り抜く。帯状に展開された魔法の波が、確かに人体を両断した手応えを得る。
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速やかに建物の縁から飛び立つと、入れ替わるように銃弾が元いた位置を掠めていった。軌跡を辿ったその先にステッキを振り抜く。帯状に展開された魔法の波が、確かに人体を両断した手応えを得る。死に様に放たれた応射の弾が気安く私の肉体をえぐる。
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リザちゃんがいる方向からも景気の良い爆発音が聞こえてきた。どうやらなんとかうまくいっているようだ。事態はすでに残存兵力の掃討に切り替わっている。
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ふわりと地面に降り立つ。遁走をはじめた背中に人差し指を突き立てて一人ひとり、順番に始末していく。破損した戦車の陰を覗くと、逃げ遅れた若いソ連兵の泣きじゃくる声が耳に入ってきた。
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もし口を閉じて黙っていたら気づかなかったかもしれないのに、甲高い泣き声のせいで私の目には敵を仕留めるのに十分な情報量が描き出される。相変わらずロシア語は分からない。
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毎度の確認に少々辟易しながらも私は律儀に答える。
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<月のものが重くてお腹がすごく痛い以外は平気>
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激しく動いたからまた当て布を替えなければならないだろう。食糧も必要だ。どっちもソ連兵から鹵獲できるといいのだけれど。
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なんとなしに空を仰ぐと頬に雪が乗った。
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なんとなしに空を仰ぐと頬を生温かい風が撫でた。
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あの日、最初の襲撃を経て私たちの部下は全員が戦死した。結局、ウルリヒ伍長から話は聞けないままだった。
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でも私たちは生きている。とっくに春を迎えたはずのこの地で、いつまでも止まない雪を浴びながらライヒのために戦い続けている。
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でも私たちは生きている。めでたい春を迎えて久しいこの地で、長く続いた雪の代わりに銃弾を浴びながらライヒのために戦い続けている。
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”**一九四六年四月三〇日** 親愛なるお父さんへ。紙がなくなりそうなのでしばらくお手紙を書けなくなるかもしれません。この地に来てからもう一ヶ月余りが経過しました。身体に空いた穴が二桁を越えてからは数えるのを諦めています。放っておけばそのうち塞がるけど、戦うたび穴が空くので実際のところいくつあるのか分からないのです。こないだ、ようやく戦死した人たちの埋葬を全員分終えました。得体の知れない化け物に殺されてしまった捕虜の皆さんも今では土の下で一緒になっています。”
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改行音が鳴らない。また故障したみたいだ。慣れた手つきでアームの位置を無理やり下げて、続きを書き進める。
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「食糧、そこそこ手に入ったわ。またしばらくは持つと思う」
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”ベルリンの様子が心配でなりません。ブリュッセルだってきっと大変に違いありません。私たちがここで戦うことで、少しでも戦況が良くなることを願っています。あるいはもしかしたら、今日の戦いがソ連の最後の悪あがきなのかもしれません。実はもうソ連軍は東部戦線から撤退を始めていて、モスクワに帰っていく途中なのです。本当にそうだったらいいなと思います。一ヶ月もお休みをとった先輩の魔法能力者たちは今にも出撃の準備を心待ちにしているのでしょう。”
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「当て布、もう変えておく?」
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「うん」
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”じきに私たちにも真の春が訪れるはずです。これだけ頑張ったのだから、フューラーもきっと私たちのことをお褒め下さるはずです。いつか解放されたヨーロッパ大陸全土にたなびく鉤十字の旗の下で、ひと目でも生のお声を聞いてみたいと思います。そういえば、今年に入ってからというものラジオでもとんとフューラーのお声が流れていませんね。ゲッベルス大臣の演説もたいへんすばらしいですが、ここぞという時にはやはり総統閣下の堂々たる鼓舞に耳を震わせたいものです。”
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”じきに私たちにも真の春が訪れるはずです。これだけ頑張ったのだから、フューラーもきっと私たちのことをお褒め下さるはずです。いつか解放されたヨーロッパ大陸全土にたなびく鉤十字の旗の下で、ひと目でも生のお声を聞いてみたいと思います。そういえば、今年に入ってからというものラジオ放送でもとんとフューラーのお声が流れていませんね。ゲッベルス大臣の演説もたいへんすばらしいですが、ここぞという時にはやはり総統閣下の堂々たる鼓舞に耳を震わせたいものです。ここにもし国民受信機があったら……”
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「ねえ、ちょっと」
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「うん」
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「ねえったら」
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「うん?」
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なにやら急に肩をがしりと掴まれたので、ふと我に返った。どうやらずっと空返事をしてしまっていたらしい。一旦、お手紙を書くのは中断して、彼女に手伝われながら股の当て布を取り替えた。皮肉にも襲撃が繰り返し来なければ早々に布不足に陥っていただろう。彼らが携行している医療品のおかげで私はドレスを自分の血で汚さずに済んでいる。
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とはいえ、もう他人の血でずいぶん汚れてしまっているけれども。いつ襲撃が来るのかも分からないので洗濯はだいぶ前に諦めた。どうしても私はドレスで戦いたい。
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「そういうリザちゃんは身体、大丈夫なの」
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一方で、どうにもならないのは彼女の身体だった。布や食糧は死体の横に転がっていても義肢はそうはいかない。手で触れてもはっきりと分かるほど彼女の手足はぼろぼろに傷ついている。魔法の力を与えても肉体ほどには丈夫にならないし、ひとりでに治りもしない。
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「だめかも」
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そう言う彼女の声は存外に明るい。このところソ連軍の襲撃が減ってきているせいかもしれない。長きにわたる戦いにもいよいよ終わりが近づいているのだ。静かな夜をぶち壊しにする戦闘機の金切り音も聞こえなくなって久しい。間違いなく、敵の資源は払底しつつある。
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「ねえ、リザちゃんは戦争が終わったらどうするの」
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彼女の義手のぎざぎざとした傷跡を指先でなぞりながら、優しく尋ねた。私はもちろん管制官のお勧めに従って”たいぴすと”になるつもりだけど、彼女の将来の夢はまだ聞いたことがない。
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すると、淡い輪郭の人影が小刻みに震えて、途端に低い声を出した。
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「絶対に、笑わないでよ」
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「え、なんで」
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「いいから、約束して。笑わないって」
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「笑わないよ。なに?」
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「えっとね……お嫁さん」
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不自然な沈黙が二人の間に流れた。あんなに強くて、威張りんぼな彼女が、平和な世の中になったら、なんと男の人とお付き合いをしてお嫁さんになるつもりなのだという。
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「ちょっと、なにか言って――」
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それは……それって……。
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とてもすばらしいことだ! 私はすぐさまオーク材でできた両手を握りしめて上下に振った。
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「すごい、そんなことまで考えていたんだ! リザちゃん、すごいよ」
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「えっ、そう? そんなに?」
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「私は生活の身を立てることしか考えていなかったから」
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「ううん、でも私も――」
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「まさか、戦争が終わっても国家の繁栄に身を尽くすなんて! すごい、本当に」
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「えっ?」
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管制官が仰っていた「女の役目」を果たすには結婚しなければならない。こうして月のものが訪れる年頃になってしばらく経つ私でも、そんな話はずいぶん先のことに感じられる。男の人とお付き合いをする、というのもどうやればいいのか分からない。殺すだけなら指先一本だけで済むのに。
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「赤ちゃんは何人生むつもりなの?」
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「……何人?」
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「管制官は国家のためにはすべての女性が最低三人産むのが望ましいって言ってた」
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でも、リザちゃんは違う。ちゃんと未来の国家に貢献する方法を考えていたんだ。
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「リザちゃんならきっとたくさん産めるよね」
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「……うん、そうね」
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するり、と木でできた両手が私の手から抜ける。「そろそろ寝ようかしら」と言って、ベッドの方に歩き出す。軋む両足をひょこひょこと動かしながら揺れ動く人影を見送った後、私も手探りで机の上に座った。
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このところ、タイプライタはおかしな音を出すようになったけれど、だからといって練習を疎かにしてはいけない。
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私も頑張らなくちゃ。
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”一九四六年五月七日。親愛なるお父さんへ。このところめっきり暖かくなりました。昨月から外套を着ていませんが、今月はドレスでも暑いくらいです。ですが、こればかりは脱ぐわけには参りません。なんといっても私の軍服ですから。とはいえ、最近はソ連兵が来ないので少々退屈しています。お腹もだんだん空いてきました。
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