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Rikuoh Tsujitani 2024-02-17 21:24:18 +09:00
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@ -313,9 +313,10 @@ tags: ['novel']
 首都が近づいてくるといい加減に荒野は終わり、ささやかな緑地がところどころに見えはじめた。
 度重なる空爆によって痛めつけられたこの地の首都にビルはなく、かといって誰にも必要とされない建物が再度建てられることもなく、いくつかの重要な建築物を除いてはまるで入植当時の素朴な景色が遠目に広がっている。
 陽が落ちて空が闇夜に包まれると我々は戦闘車輌でぐるりと周囲を取り囲んだ仮設の陣地を平原に構築して野営を始めた。
 夜中は本来、ストリームの視聴者数をもっとも見込める頃合いだが、戦場で動くのに適した時間帯ではない。
 夜中は本来、ストリーミング配信の視聴者数をもっとも見込める頃合いだが、戦場で動くのに適した時間帯ではない。
 例によって各自のレーションを黙々と食べる。気温が下がった夜間ならヒーターでレーションを温めるのも悪くない。いくらかマシな味になる。
「なんとかここまで来れたね」
 例によって各自のレーションを黙々と食べ終わった後、戦場の女神にカメラを向けると「健康と肌と強さのために早寝早起き」を謳う合衆国保健福祉省との広告用メッセージを健気にこなした後、気の利いた小話をしてくれた。
 戦場の女神にカメラを向けると「健康と肌と強さのために早寝早起き」を謳う合衆国保健福祉省の動画案件を健気にこなした後、気の利いた小話をしてくれた。
「実際に、寝た方がいいのは確かよ。たっぷり七、八時間も寝たら世界が光り輝いて見えるけど、忙しくて五時間も寝られない日が続くとなにもかも壊したくなる」
「なにもかも壊せそうな君が言われるとぞっとするな」
「もちろん本当にはやらない。みんなも安心していいわよ。私が許可なく一定の分速以上で動いたり、一定以上のジュール熱を発したら、これがピカピカ光ってデフコン1が発動しちゃうから」
@ -347,7 +348,7 @@ tags: ['novel']
「ジョン・ヤマザキさん。あんた、軍歴がないっていうのは、嘘だな」
 私はあっさりと認めた。
「バレちゃ仕方がないな」
「あんなに手早く戦闘車輌を乗り降りする素人はいませんよ。あと、レーションも食べ慣れている。あれって普通の人には味がかなり濃いんです」
「あんなに手早く戦闘車輌を乗り降りする素人はいませんよ。あと、レーションもかなり食べ慣れている。普通はもっと手間取るものです」
 言われてみれば確かにそうだ。目のやり場や身体の動きには気をつけていたが、まさかそんなところで露呈するとは。
 魔法少女に気に入られたフリーライターが戦場を共にする。いくらなんでもできすぎた話だ。出版社に提案したらこれも即ボツだろう。いくら彼女が強力な兵器でも国連軍という巨大な組織はそういうふうには動かない。
 あの時のバックグラウンドチェックで彼らは私の軍歴を正確に把握していた。私は正直に答えたから国連軍に認められたのではない。元スパイらしくきちんと嘘をついたから認められたのだ。
@ -535,7 +536,7 @@ tags: ['novel']
 横を見ると、戦闘車輌の後部座席に次々とTOAの兵士たちが収容されていく様子が見えた。
「殺さなかったんだな」
 これにもあくまで淡々と少尉は肩をすくめて答える。
「そりゃムカつきますけどね。散々ニガーを殺せとのたまってた連中です。実際に手を下しもしたでしょう。でも、こいつらをどうすべきかはの判断することじゃない。決めるのは法律だ。勝手に処刑するような連中と一緒になりたくない」
「そりゃムカつきますけどね。散々ニガーを殺せとのたまってた連中です。実際に手を下しもしたでしょう。でも、こいつらをどうすべきかはの判断することじゃない。決めるのは法律だ。勝手に処刑するような連中と一緒になりたくない」
 結局、法的手続きが一番ましな神らしい。
 全員の収容が終わると、エドガー少尉は衛星通信で国境外に待機している部隊と連絡をとった。想定以上の数の捕虜を護送しなければならなくなったので自分たちが帰るための追加の車輌が必要になったのだ。
 かくしてTOAことトゥルース・オブ・アメリカは名実ともに滅びた。