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彼は話作りのみならず会話にも長じていた。どんな理知的な人物も――いや、あるいは理知的であるからこそ――まともに向かっていけば、受け流した刃を切って返すがごとくおちょくられてしまう。ならば決して小馬鹿にされまいと押し黙っていると、それはそれで正面から突っ切られる。明らかにアウェーな場でもその軽妙な振る舞いはまったく不利を感じさせない。僕の見聞きする限り、彼は無敵だった。
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かくいう僕も、当時の作品を頭のてっぺんから足のつま先の隅々までおちょくられ倒した後、苦し紛れに彼を挑発したことがある。「そんなにコメディが好きならそういうところで書けばいいじゃないか。もしや自信がないのか?」彼は身じろぎもせずに答えた。「笑おうとしているやつを笑わせるのはただの奉仕だ。それのなにが面白い?」笑うつもりがないところで笑わせるから面白い。彼はそう飄々と言ってのけたのだった。
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かくいう僕も、当時の作品を頭のてっぺんから足のつま先の隅々までおちょくられ倒した後、苦し紛れに彼を挑発したことがある。「そんなにコメディが好きならそういうところで書けばいいじゃないか。もしや自信がないのか?」彼は身じろぎもせずに答えた。「笑おうとしているやつを笑わせるのはただの奉仕だ。それのなにが面白い?」笑ってはいけないからこそ面白い。彼はそう飄々と言ってのけたのだった。
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彼の伝説は続いた。極左団体の女を寝取り「転向させてやったぞ」と民青の丸眼鏡に自慢したり、mixiでしきりに創作論を語る先輩を「でもまだ一作も書けてないっすよね」となじって面目を潰したりと、やっていることは邪悪なのに、そこはかとない痛快さが彼の名声を絶妙に高めていった。
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