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title: "Kindle Paperwhite(第12世代)のテンション低めな雑感"
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date: 2024-11-04T09:11:55+09:00
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6年も共に暮らしたKindle Oasis(第9世代)に別れを告げて、ついに新しいKindle端末を購入した。これまでにも何度か買い替えの機会をうかがっていたものの、ページ送りボタンを搭載した新型が改めて出ることはなさそうだとようやく諦めがついたのである。
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物理ボタン付きのE-ink端末自体は他にもある。楽天Koboにもあるし、BOOXやらBigmeやら、最近は競合他社の存在に事欠かない。それらの多くはより完全なAndroid OSを搭載してもっと広範な用途に向いていたり、Kindleに先んじてカラー対応のE-inkディスプレイを備えていたりする。
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しかし僕が選んだのは、またしてもKindleだった。僕はE-ink端末に小説を読む以外の用途を求めていない。カラー表示もいらなければ、Kindle以外の電子書籍ストアにはなおさら用事がない。僕の数千冊のライブラリはAmazonのサーバ上にだけ存在している。延長保証に入りさえすれば破損品を四の五の言わずに交換してくれるのもたぶんAmazonだけだ。
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そういう現状追認的な――マイニューギアと声高らかに叫ぶには程遠い、テンション低めな納得させられ感によって――今、最新のKindle Paperwhiteが僕の手元にある。約6年前にKindle Oasisを買う前には、さらに前世代のKindle Paperwhiteを使っていたのでこれはなにげに久しぶりの再会ということになる。
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試しにKindle Oasisと並べて写真を撮ってみる。僕の記憶の中のKindle Paperwhiteよりだいぶ大きい。それもそのはず、当時は6インチの坊やだった彼もしばらく会わない間にずんずん成長を遂げて、一つ前の第11世代では6.8インチ、第12世代を数えた今では7インチの大台に到達せしめたのだ。なんだか遠い親戚のような気持ちである。
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この筐体の寸法はかなり際どいが慣れると存外に良い。ぎりぎり片手で操作できなくもない範囲で相応に大きいディスプレイサイズを実現している。背面に凹凸を備えたOasisほどのホールド感はないが、このPaperwhiteも大抵は片手持ちをキープできる。電車内で片手が吊り革に占められている状況下ではある意味一番ありがたい”機能”と言えるかもしれない。
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して、問題はタッチ操作だ。そもそもページ送りボタンにこだわっていたのは従来のE-ink端末のレスポンスが芳しくないせいだ。タッチしてページを送ったつもりが送れていない、逆に、送ったつもりがないのに送られている。タッチ操作から反映までのフィードバックが鈍く調子が合わないなど、E-ink端末の物理ボタンはこうしたタッチ操作由来の問題を抹殺すべく'80年代から21世紀の未来に送り込まれたのだった。ターミネーターとは逆だな。
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だが、この新型Paperwhite、期待を大幅に上回るほどレスポンスがおそろしく速い。端末のハードウェア性能が進化している。以前は数秒単位で待たされていた辞書も一瞬で表示される。レスポンスが良いということはつまり誤入力もしにくいわけで、もはや物理ボタンなしでもまったく操作に困らない。
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してみると、AmazonがOasis、過去にはVoyageといったボタン付きKindle端末をことごとく葬ってみせた背景には、ハードウェア性能の向上によって物理ボタンの需要が消失する予測――もちろん物理ボタンの製造コストを減らしたい意図も多分に含まれていたにせよ――があったのではないかと思う。今時、スマートフォンに物理ボタンを付けろなどと誰も言わないように、十分にレスポンスが良ければE-ink端末にも不要なのは自明だ。
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E-ink端末の最大の利点とされるバッテリー持ちもますます進歩した。僕は公称の条件より抑制的にバックライトもWi-Fiも切って使用しているため、毎日1時間くらい読書しても1、2%ずつしか減らない。減少ペースが一定だとしたら看板に偽りなく本当に数ヶ月は充電しなくて済むのだろう。
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その一方で、課題もなくはない。Kindle Paperwhiteは今やずいぶん高価な端末となった。僕が12年前に初めて買ったPaperwhiteは1万円足らずで手に入った。画素数が300ppiに向上して「紙同様」と謳われた2015年モデルはいくらか値上がりしたが、せいぜい1万4000円程度だった。それが現在では、なんと2万7980円。絶妙にごまかしているがほぼ3万円と言っていい価格帯だ。きょうび、3万円も出したらそこそこちゃんとしたAndroidタブレットが買えてしまう。
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ましてやKindle端末は本体だけ持っていてもしょうがない。端末を買った上で小説なり漫画なりのコンテンツも揃えないといけない。紙の本を愛読している人からすれば、3万円もあったら30冊はゆうに積めると頭の中でそろばんを弾くに違いない。そのあたりを踏まえると、押しも押されもせぬ天下のAmazon様にはもう少しばかり価格に手心を加えてほしかったというのが正直な感想だ。
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これは僕が描いていた未来予想図とは違う。Amazonはその圧倒的な資本力でもって自社製品をタダ同然でばらまき、必ずや人々に新たな読書体験を啓蒙せしめるのだと確信していた。全地球津々浦々、どんな辺境に住まう人々にもAmazon印の端末が即日届けられるのだ。紙も鉛筆もない? 学校もない? ええ、弊社の製品が教科書にもノートにも学校にもなりますよ。コンテンツも無償で提供いたします。はい、もちろん全世帯、ご家族全員にご用意させていただきます――
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――電子書籍の普及に伴い本もどんどん安くなり、片やグローバルな需要拡大により著者の印税も増大――Amazonのプラットフォームも栄えて、まさに三方良しの資本革命――そんな妄想――ところが現実は、むやみやたらに高性能のスマートフォンと高速の5G回線をふんだんに用いたショート動画の氾濫である。これでは警鐘の鳴らし甲斐に欠ける。半導体不足と物価高でスカイネットが成り立たない未来。
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それでも、以前からKindle端末を買い続けている人々はこの歴代最速の新型に大きな価値を見出すのだろう。事実、各種レビューはどれも高い評価を付けている。僕も異存はない。操作していてこんなに心地よいKindle端末は初めてだ。しかしながら、E-ink端末の高級化が市場のニッチ化を招いてしまわないか……と少々危惧もしている。
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