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Rikuoh Tsujitani 2024-02-21 23:04:37 +09:00
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@ -387,11 +387,11 @@ tags: ['novel']
 こうしてなし崩し的に戦場に駆り出されたが、以降は特に語るほどの話はない。圧倒的な物量差に加え、短気なインフルエンサーの指揮する戦争が有利に運ぶはずもなく、私が率いた中隊は一週間と経たずに合衆国軍に制圧された。捕らえられた後はいいように再利用され、今度は合衆国軍側のスパイとなった。勤務評価が言うにはそこそこ役に立ったらしい。三年後、国連安保理決議の採択とともに私はTOAを脱出、自動的に除隊された。三年間のスパイ勤めに対する恩給は、まあそれなりには出た。
 公にはできない仕事でキャリアに穴を空けた私に就けるまともな仕事はなかった。社会は内戦が起ころうが母国の一部が空爆されようがほぼ滞りなく進んでいた。以来、人々を怒らせる小話を書いて日銭を稼ぐ日々だ。あまりうまくはいっていない。軍のツテを駆使してでも魔法少女とお近づきになれなければ今年中に貯金が尽きていただろう。
 もっとも、エドガー少尉は多くを知りたがらなかった。「所属部隊は?」「ここの第一九連隊だ」「そうですか、苦労しましたね」これで終わりだった。彼が去った後、しばらくして私もようやく眠れそうになったので元いた寝袋にくるまって目を閉じた。起きた時に捕縛されていたら、それはそれで仕方がないと思った。
 意外にも、朝日に照らされた翌日の状況に変化はなかった。少尉と何事もなかったかのように挨拶を交わし、ばっちり睡眠をとった我々の最強兵器は、敷物を巻き終えて溌剌とした様子でカメラの前に現れた。
 意外にも、朝日に照らされて迎えた翌日の状況に変化はなかった。少尉と何事もなかったかのように挨拶を交わし、ばっちり睡眠をとった我々の最強兵器は、敷物を巻き終えて溌剌とした様子でカメラの前に現れた。
「ハーイ、今日は敵地の首都、私たちのテキサスを奪還しにいきます!」
 我々は戦闘車輌に乗り込んでルート二〇を直進する。昨日のコロラド・シティからやや大きいアビリーンに到達すると緑地は目に見えて増えた。空軍基地の街として知られるこの都市にさえ戦闘機はもう一機も残っていない。互いの人生が一回目だった頃の戦いで合衆国軍にあらかた撃ち落とされた上に、三年後の空爆でも空軍基地は優先的な破壊目標だったからだ。
 ここ、アビリーンの街並みも荒廃している。住民たちは残った資材を再利用してあちこちにバラック小屋を建てて暮らしている。戦闘車輌が舗装の甘い道路を踏み鳴らして続々と横断していくと小屋から散弾銃を持った土気色の主人たちが現れたが、特になにもするでもなく我々を見送っていった。こちらもこれ以上はなにもしない。この地の実情はよく分かった。
 ウェザーフォードを越え、フォートワースに着くと兵士たちも多少はピリピリとしてきた。首都のダラスはもう目と鼻の先、太陽は高く昇っている。他愛もない雑談が減り、魔法少女の空中偵察は格段に回数が増えてあまり涼みに戻ってこなくなった。
 あちこちに朽ちた廃材でバラック小屋を建てて暮らす住民が見える。戦闘車輌がひび割れた街路を踏み鳴らして続々と横断していくと小屋から散弾銃を持った土気色の主人たちが現れたが、特になにもするでもなく我々を見送っていった。こちらもこれ以上はことを荒立てない。この地の実情はよく分かった。
 ウェザーフォードを越え、フォートワースに着くと兵士たちも多少はピリピリとしてきた。首都のダラスはもう目と鼻の先、太陽は高く昇っている。他愛もない雑談が減り、魔法少女の空中偵察は格段に回数が増えてあまり涼みに戻ってこなくなった。
「ここからは徒歩で行かざるをえませんね」
 車輌から顔を出したエドガー少尉が振り返って言った。首都侵攻を警戒していたTOA国軍が地雷原を敷き詰めているのだ。街は空爆で閑散としているが地雷はまだ生きていると考えられる。事実、国連安保理決議に基づいて派兵された地上軍のうちの一部は首都にまで迫っていたが、地雷原の処理に手間取り攻めきれなかったという。
 街を目の前にして何台もの戦闘車輌がブレーキをかけて横付けされる。少尉の呼びかけに応じて戻ってきた魔法少女に説明が施された。