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Rikuoh Tsujitani 2023-08-29 14:33:27 +09:00
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@ -127,7 +127,7 @@ server {
}
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CloudflareのSSL/TLS設定で「フル厳密」を用いる環境でなければオリジンサーバの証明書は除いても差し支えない。自動で付与されるエッジ証明書でも動作する。なぜか知らないがMailuはローカルでもHTTPSで通信しているため、`proxy_pass`の記述も合わせる必要がある。
CloudflareのSSL/TLS設定で「フル厳密」を用いる環境でなければオリジンサーバの証明書は除いても差し支えない。自動で付与されるエッジ証明書でも動作する。MailuはローカルでもHTTPSで通信しているため、`proxy_pass`の記述も合わせる必要がある。
```nginx
#メールサーバ用

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@ -5,7 +5,7 @@ draft: true
tags: ['novel']
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 全国高等学校硬式戦争選手権大会の準決勝、帝國実業と報国学園の試合は佳境に入っている。十名いる選手のうち六名がすでに仮想体力を喪い退場を余儀なくされ、残る四名が市街地を模した公死園戦場の各所で互いに隙をうかがっていた。帝國実業三年の主将、葛飾勇はこの時、唱和八九式硬式小銃に装着された弾倉が最後の一つだった。地道な基礎練習を怠らない生真面目な性分が功を奏して彼は残りの弾数を正確に把握していたが、同時にそれは自身の劣勢を否が応にでも自覚させられる重い錨となってのしかかる。最悪の場合、たった九発の銃弾で残る四人の敵を倒さなければならないのである。
 全国高等学校硬式戦争選手権大会の準決勝、帝國実業と韋駄天学園の試合は佳境に入っている。十名いる選手のうち六名がすでに仮想体力を喪い退場を余儀なくされ、残る四名が市街地を模した公死園戦場の各所で互いに隙をうかがっていた。帝國実業三年の主将、葛飾勇はこの時、唱和八九式硬式小銃に装着された弾倉が最後の一つだった。地道な基礎練習を怠らない生真面目な性分が功を奏して彼は残りの弾数を正確に把握していたが、同時にそれは自身の劣勢を否が応にでも自覚させられる重い錨となってのしかかる。最悪の場合、たった九発の銃弾で残る四人の敵を倒さなければならないのである。
 相対する唱和高校の戦いぶりは堅実であった。むやみに弾を浪費して一か八かに賭けるくらいなら潔く負けを認めて予備弾倉をその場に残していく。準決勝でもやり方は変わらないだろう。つまり、四人の敵の弾薬は未だ豊富であって正面での撃ち合いではまず勝てる見込みがない。ゴムでできた硬質弾をしこたま食らって血まみれになっても、本人が直立しているかぎりにおいて戦場に立ち続けられた昔とは違う。現行の仮想体力制では胴体に四発ももらえば確実に即退場だ。
 勇は壁伝いに歩いて近場の建物の中に忍び足で入った。戦場をまばゆく照らす照明から逃れて部屋の陰に座り込んで身を落ち着ける。通信機で仲間との交信をしたいところだが、仲間の状況が判らない以上はうかつに音を鳴らすわけにはいかない。同様に、彼自身もまた不用意に声を発すれば位置を補足される危険性を伴う。
 だだだだ、と硬式小銃特有の低い銃声が聞こえた。さらに遠くでは、わああっ、と観客の歓声が波のようにこだまする。敵か味方か、どっちかがやられたらしい。観客席から見える大型の液晶画面からも、試合を中継しているテレビでも、勇たち選手の仮想体力は常に表示されていて、残り何発持ちこたえられるのか、何発撃てるのかなどが把握できる仕組みになっている。さらには複数の望遠カメラが刻一刻と変化する戦場の様子を捉えて、選手たちのここ一番の勇姿を映し出す。帝国中の臣民が関心を寄せる公死園の準決勝ともなれば、その視聴率なものに違いない。
@ -43,31 +43,59 @@ tags: ['novel']
「だが危険すぎる。お前のその歯はどうするんだよ。差し歯どころか歯医者に行く金もないくせに」
「公死園決勝と引き換えに前歯一本なら安い代償だな」
 悪びれもせずにユンはごつごつした顔をニイッと歪ませて歯抜けの笑顔を晒した。
 その後
 その後、負傷兵のユンを除く選手たちは監督に招集を命じられて手狭な控室に集合した。決勝進出への労い、もし優勝すれば我が校に記念杯が再び帰ってくる栄光、勝って兜の緒を締めよの故事成語の意味と由来、かつて主将として三〇年前に帝國実業を優勝に導いた監督の昔話……などが滔々と語られ、最後に「勇だけ残れ」と告げられた。
 閑散とした部屋で監督と二人、年嵩でもユンに負けず劣らずの恵体を持つ彼が険しい目線を勇に向けること一分弱、目上の者に向かって先に口を開くのは憚られるゆえ頑なに沈黙を守っていたが、秒を追うごとに吉報ではない確信がどんどん増していった。ようやく重苦しい声音で監督が放った言葉は彼を動揺させた。
「勝ったには勝った。それはめでたい。だが勝ち方がよくなかったな」
 ユンのことだ、と直感した。
「はい。自分も彼にはよく言って聞かせました。あれは危険すぎると――」
 だが、監督は厳しい顔を左右に振って制した。
 だが、監督は厳しい顔をごくわずかに振って制した。
「そうじゃない。逆だ。なぜ、主将たるお前があのような勇姿を公死園で見せられなかったのだ」
「は――いえ、しかし――」
 予想外の詰問に勇は声が淀んだ。軍刀なんて装備するくらいなら予備弾倉を一個多く持つ方がいいに決まっている。あれは相当近づかないと使えない上に急所判定でなければ一撃必殺にならない。言い訳は山のように湧いたがどれも監督の期待する答えとは違っているような気がした。
 予想外の詰問に勇は言い淀んだ。軍刀なんて装備するくらいなら予備弾倉を一個多く持つ方がいいに決まっている。あれは相当近づかないと使えない上に急所判定でなければ一撃必殺にならない。そうでなくても、あの時は弾薬が限られていたから正面きっての対決は到底無理だ。言い訳は山のようにわいたがどれも監督の期待する答えとは違っているような気がした。
「すいません。自分も軍刀を装備すべきでしょうか」
 代わりに、質問に形式で答えた。
 代わりに、質問の形式で回答を保留した。
「いや、そうは言っていない。別に軍刀でなくてもいい。だが、誉れ高き公死園の戦場で華々しい成果を上げるのは、ユンではなくお前であるべきなのだ」
「というと……?」
 勇には監督の言っている含意が解らなかった。あれこれ言ってもユンは立派な戦績を持つ副主将だ。先の行動の通りやや独断専行気味のきらいはあるが、とにかく文句なしに強い。強くなければ強豪の帝國実業の前衛は務まらない。一対一の模擬戦では、主将の勇も近距離戦では一度も勝った試しはない。
「やつは外地人だ」
「え、違いますよ、両親も祖父母も帝都に住んでいます」
 監督があまりにも的はずれなことを言ったので、反射的に否定の言葉が口を衝いて出た。どんな状況であれ目上の者の意見を否定するのはとてつもない無礼に値する。はっ、と息を呑んで監督の顔を見ると、案の定、その表情は厳しさを増していた。それでも監督は若干の間を置いて、今度ははっきりと言い直した。
「え、いや違いますよ、両親も祖父母も鶴橋に住んでいます」
 監督があまりにも見当違いなことを言ったので、うっかり言葉が口を衝いて出た。どんな状況であれ目上の者の意見を否定するのはとんでもない無礼に値する。はっ、と息を呑んで監督の顔を見ると、案の定、その表情は厳しさを増していた。それでも監督は若干の間を置いて、今度ははっきりと言い直した。
「そういう意味ではない。大和の血統ではないということだ。あいつは朝鮮人だろう」
 勇はすっかり虚を突かれて言葉を失った。それをどう受け取ったのか定かではないが、勢いを取り戻した監督はさらに話を続けた。
 勇は虚を突かれて言葉を失った。それをどう受け取ったのか定かではないが、勢いを取り戻した監督はさらに話を続けた。
「別に朝鮮人や支那人が選手にいようと構わん。強ければ入れるし弱ければ捨てる。それは日本人とて同じだ。だが、この晴れ舞台、公死園の大詰め、ここ一番という時に脚光を浴びるのは、われわれ日本人でなければならん。それがお前の義務だ」
「しかし、自分としては――分隊としての役割、分隊としての勝利――そういうものも、あるかと愚考いたしますが――ユンの剣戟もそれはそれで戦略の価値ありかと――」
 理に反する都合を突きつけられて、なおも必死に弁明を繰り出す勇であったがそれが火に油を注ぐ行為でしかないのは目に見えていた。しかしそれでも、ついさっきまでは他ならぬ本人に罵声を浴びせていたのに、どういうわけか今ではすっかり擁護してやりたい気持ちでいっぱいになっていた。
「では、あのユンに錦を飾る栄光をくれてやるというのか。朝鮮人のあいつにか。寛大なことだ。そうやっていつまでもつるんでいられると思うな。所詮は別の民族なのだ。それはそれとして――」
 唐突に監督の拳がすさまじい速度で勇の頬に叩き込まれた。いつもと違って意表を突かれたために彼は姿勢を崩して地面に尻をついた。遅れてやってくる鋭い痛みを上塗りするように、仁王立ちの監督が見下ろす眼差しで告げる。
「上官への言葉遣いには気をつけろ。お前は二回も口ごたえをした。決勝進出に免じて精神注入棒は勘弁してやる。だが、その頬の痛みはやつを擁護する割に合うのかよく考えておくんだな」
「上官への言葉遣いには気をつけろ。お前は二回も口ごたえをした。決勝進出に免じて精神注入棒は勘弁してやる。だが、その頬の痛みはやつを擁護する割に合うかよく考えておくんだな」
 ほぼ反射的な動作で直立不動の姿勢に戻り、勇は大声を張った。
「ご指導ご鞭撻ありがとうございましたぁ!」
 鈍い痛みの残る顔面に構わず、監督と別れるやいなや彼は携帯電話で二人の選手を呼び出した。ものの数分のうちに誰もいない控室に現れた彼らは先ほどの勇と同じうろたえた様子で口を閉ざしていた。
「貴様ら、あの試合でなにをしていた」
 主将として、帝國軍人さながらの低い声音を腹から絞り出して下級生の二人に詰め寄ると、左側の方が先に釈明をした。
「自分は弾薬を切らしておりまして、移動途中の際の接敵で退場と相成りました!」
 建物に潜んでいる最中にやられたのはこいつだったか、と彼は納得を得る。しかし声はあくまで厳しさを保った。
「隠密を怠るから敵に発見されるのだ! この土壇場では不運も自己責任と捉えろ!」
「申し訳ありません! 基礎練徹底いたします!」
「それで――」
 次に勇の鋭い目線は右側に向いた。
「貴様はまだ生きていたな」
「自分も弾薬が心許なく、遠方より機会をうかがっており……」
「何発残ってたんだ」
「は、予備弾倉はなく、十三発を残すのみとなっておりました」
 かっ、と身体中の血が沸騰するのを感じた。勇はさらに大きく声を跳ね上げ、低い音程を維持するのにたいそう苦労した。
「一人胴体四発と見ても三人は仕留められるではないか! 今更退場するのが惜しくなったのか?」
 ぐいっと「帝國実業高等学校」の刺繍が施された戦闘服の胸ぐらを掴むと、下級生らは今にも泣き出しそうな表情を浮かべて謝罪した。だが、彼は追撃の手を緩めなかった。
「貴様らが身を賭していれば副主将は歯を失わなかった。そこに直れ!」
 二人が姿勢を正すか正さないかのうちに、勇は今しがた自分が食らったのと同じ要領で二人の頬に拳を振り抜いた。後ろに倒れ込む下級生に向けて一転、落ち着いた声色で言う。
「貴様らは二年生がてら優秀な成績を収めて正規選手に選ばれた。決勝では誉れ高く戦え。来年もあるなどと思うな」
「ご指導ありがとうございました!」
 二人揃って自分とそっくりの絶叫を張り上げた後輩を後に、ようやく勇は帰路に着いた。
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