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大勢がおちょくられ倒していた部屋の中で、彼が「いっぱいいっぱい」であろう、と判断した人間だったのだ。一件落着を経た後の彼はわずかに表情に翳りを見せて「ちょっとしくったな」とつぶやいた。彼はもう作品を書いていない。その瞬間、僕は曖昧模糊としていた基準の一端を垣間見た。以来、おちょくられるがままにしている。
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彼がなんの躊躇いもなくおちょくってくるうちは、僕はたぶん大丈夫だ。「いっぱいいっぱい」になっていない。過ぎた怒りと悲しみに呑まれていない。虚無と虚飾に取り込まれていない。もし、いつか僕がそうでなくなった時、きっと彼はとても優しくなるのだろう。
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彼がなんの躊躇いもなくおちょくってくるうちは、僕はたぶん大丈夫だ。「いっぱいいっぱい」になっていない。感性が肉体からあふれていない。思考を持て余していない。もし、いつか僕がそうでなくなった時、きっと彼はとても優しくなるのだろう。
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誰しも人には説明しようのない羅針盤を懐に潜ませている。敵味方の二色で世界を塗り分けないように、善悪の二値に囚われないように、納得しないことに納得する。「いっぱいいっぱい」にならないように。言うまでもないが、この話は全部嘘だ。こんないけ好かないやつがのさばっていいはずがない。最後は必ず、語り主の華麗な一言にやり込められて押し黙る。……そうであるべきだろ?
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誰しも人には説明しようのない羅針盤を懐に潜ませている。「いっぱいいっぱい」にならないように。言うまでもないが、この話は全部嘘だ。こんないけ好かないやつがのさばっていいはずがない。最後は必ず、語り主の華麗な一言にやり込められて押し黙る。……そうであるべきだろ?
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