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@ -11,7 +11,7 @@ tags: ['essay']
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文明の開闢、人の世の理(ことわり)を超えた力を行使するのは神への冒涜であり、王権や時の権力に対する反逆と見られてきた。したがって「魔法」とはもっぱら邪悪な文脈を帯びる能力に他ならず、信仰に背く者や政敵には先回りして「魔女」のレッテルが貼られる。
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邪悪な魔法を用いるゆえに魔女なのではなくて、邪悪ゆえに魔女であり、魔女なのだから魔法を用いる、すなわち害をもたらす存在である、との解釈だ。そして、これを排除せんと試みる――なお、魔女とは言うが必ずしも女性が名指しされていたわけではない――言うなれば邪悪の代名詞だった。
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邪悪な魔法を用いるゆえに魔女なのではなくて、邪悪ゆえに魔女であり、魔女なのだから魔法を用いる、すなわち害をもたらす存在である、との解釈だ。そして、これを排除せんと試みる――なお、魔女とは言うが必ずしも女性が名指しされていたわけではない――言うなれば、邪悪の代名詞だった。
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対して我々がよく知る「魔法少女」の牧歌的雛形はそこから脱却が図られている。その作品世界では魔法は純粋に技術的なものであり、ことの善悪は用いる者の性質によって決まる。時に作中の魔法少女が意図せず攻撃性を発揮したために予定調和的な迫害を受けるが、最終的には悪を打倒するか和解を経て大団円を迎える。この段階における武力としての魔法は緊急避難的な文脈が強い。
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@ -25,7 +25,7 @@ tags: ['essay']
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一連の例は「魔法少女=戦闘要員」以後の作品では典型のものではあるが、これらを一つの要素ではなくメインテーマに押し上げて「魔法少女もの」全体の印象をがらりと塗り替えてしまった作品こそが「魔法少女まどか☆マギカ」だ。魔法少女といえばなんかすごく苦しむんだろう、みたいな由々しき先入観を植え付けたのはきっと本作の功罪なのだろう。
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以降、倒すべき悪はどんどん容赦がなくなり、呼応するように魔法少女の戦闘力もインフレを重ねていく。仲間の死と復讐の嵐。流血と四肢欠損。膨れ上がった力が時に善良な人々さえも危険に晒し、それが本来は無垢な精神を持つ魔法少女をさらに傷つけるかと思えば、むしろ悪に染まってかつての味方が敵になり、殺すにしても殺されるにしても双方痛めつけられ、なんなら完全に手遅れになってから正気に戻るとかなんとか、彼女らを苦しませる展開がひとしきり旺盛に盛り込まれてきた。
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以降、倒すべき悪はどんどん容赦がなくなり、呼応するように魔法少女の戦闘力もインフレを重ねていく。仲間の死と復讐の嵐。流血と四肢欠損。膨れ上がった力が時に善良な人々の命を奪い、それが本来は無垢な精神を持つ魔法少女をさらに傷つけるかと思えば、むしろ悪に染まってかつての味方が敵になり、殺すにしても殺されるにしても双方痛めつけられ、なんなら完全に手遅れになってから正気に戻るとかなんとか、彼女らを苦しませる展開がひとしきり旺盛に盛り込まれてきた。
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ついにはプリキュア的な友情を超えた性愛までもが描写されるに至り、当然そのような関係は早晩に引き裂かれる定めであり、一体このジャンルを支えている連中はどれだけ少女を曇らせるのが好きなんだよと感心することしきりである。ちなみに、僕は初代プリキュアを細切れに観た以外ではマジで一作も魔法少女ものを観ていない。むろん、まどマギも観ていない。なので本稿はほぼ想像で書いている。いい線いっていたら褒めてほしい。
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@ -34,11 +34,11 @@ tags: ['essay']
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この概念に基づく世界では各国、各組織が「戦略級魔法少女」を「保有」していると考えられる。なぜなら、歴史的に積み上がった文脈に倣うのなら昨今の魔法少女は圧倒的に強い。もはや一個師団よりも戦闘機よりも戦艦よりも強い。魔法少女の軍事的なプライオリティは相当に高いと考えられる。
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そんな事実上の大量破壊兵器を適切に運用するには、命令に基づく戦闘力の行使が唯一の役割だと説き伏せ、必要に応じて指示に従うよう洗脳しなければならない。そのためには膨大なリソースを割くことも厭わないだろう。なにしろ「戦略級」と呼び表すだけあって、一人使えるか使えないかで戦況が大幅に変わってしまうからだ。
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そんな事実上の大量破壊兵器を適切に運用するには、命令に基づく武力の行使が唯一の役割だと説き伏せ、必要に応じて指示に従うよう洗脳しなければならない。そのためには膨大なリソースを割くことも厭わないだろう。なにしろ「戦略級」と呼び表すだけあって、一人使えるか使えないかで戦況が大幅に変わってしまうからだ。
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魔法少女を管理する人間も、善悪の彼岸を軽々と飛び越えられる常人離れした傑物が相応しい。そういった「管理者」にまんまと懐柔されて信頼、さらには恋慕に近い感情さえ抱く戦略級魔法少女は、彼ら彼女らの期待に応えるべく敵国の豚どもを杖一つで肉片に変え、同種の魔法少女でさえ笑顔で八つ裂きにせしめるのである。
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魔法少女を管理する人間も、善悪の彼岸を軽々と飛び越えられる常人離れした傑物が相応しい。そういった「管理者」にまんまと懐柔されて信頼、さらには恋慕に近い感情さえ抱く戦略級魔法少女は、彼ら彼女らの期待に応えるべく敵国の豚どもを杖一つで肉片に変え、同種の魔法少女をも笑顔で八つ裂きにせしめるのである。
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ところが、ある出来事によって「管理者」や「国家」もしくは「組織」に抱いていた信頼がすべて虚構に過ぎないと悟った暁には、押し寄せる絶望と悲哀から有り余る戦闘力を核弾頭のごとく爆発させ、一転、追われる身と相成って焼け野原と化した守るべきだった母国を半死半生で這いずり回り、最期には自らが手をかけてきた魔法少女たちと寸分たがわぬ惨たらしい死を迎える……。いいな、これ。戦略級魔法少女が複数個体いるならもっと複雑な展開にもできる。政治劇だってやれそうだ。
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ところが、ある出来事によって「管理者」や「国家」もしくは「組織」に抱いていた信頼がすべて虚構に過ぎないと悟った暁には、押し寄せる絶望と悲哀から有り余る武力を核弾頭のごとく爆発させ、一転、追われる身と相成って焼け野原と化した守るべきだった母国を半死半生で這いずり回り、最期には自らが手をかけてきた魔法少女たちと寸分たがわぬ惨たらしい死を迎える……。いいな、これ。戦略級魔法少女が複数個体いるならもっと複雑な展開にもできる。政治劇だってやれそうだ。
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主に異常学生たちが集うDiscordサーバに流れてきた「戦略級魔法少女」の文字列を見た瞬間に、僕の脳裏に描かれた初期のビジョンは上記のような按配だ。ずいぶん面白い概念を考えたものだと他人事の顔で続々と流れる生まれたての設定集を食んでいたら、お礼を申し上げたタイミングで「合同誌に寄稿せよ」と声がかかった。そういう感じで書くのは学生以来だな。
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