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Rikuoh Tsujitani 2023-09-09 09:51:05 +09:00
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title: "Test"
date: 2023-09-09T08:08:38+09:00
draft: true
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@ -94,7 +94,7 @@ tags: ['novel']
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 敷地の正面口では約束の時間を大幅に過ぎたにも拘らず和子が待っていた。今日の試合日程が終わってだいぶ経ち、人混みがまばらになった周辺で互いの姿を見つけるのは容易だった。先に目ざとく勇の姿を認めると、彼女は白く細い腕にはめられた腕時計の文字盤をつつく仕草をした。「三〇分遅刻。もう帰ろうかと思っちゃったわ」
 敷地の正面口では約束の時間を大幅に過ぎたにも拘らず和子が待っていた。第一試合が終わってだいぶ経ち、人混みがまばらになった周辺で互いの姿を見つけるのは容易だった。先に目ざとく勇の姿を認めると、彼女は白く細い腕にはめられた腕時計の文字盤をつつく仕草をした。「三〇分遅刻。もう帰ろうかと思っちゃったわ」
「悪い、勝ったら勝ったで色々あるんだ」
 適当にごまかそうとした言い草に、和子は持ち前のよく通る声で指摘した。
「その頬の腫れとなにか関係があるの?」
@ -121,12 +121,15 @@ tags: ['novel']
「じゃあ仮想体力制ってなんなのよ。昔みたいに倒れるまで撃ち合っていたらいいじゃない」
「それは危険だから――あっ」
「ほら、やっぱり死ぬのは怖いんじゃない。私だって勇さんに死んでほしくないわ」
 気まずくなって視線をそらすと、電車内の液晶画面に投影された広告が目に飛び込んだ。(男女で一つ、性別は二つ、子供は三人 帝国家庭庁)ちょうどそれが入れ替わって、新しい広告が表示される。
**『三菱重工の最新無人航空機……二四時間無給で働く警備員の代わりに! 町内會の見回り要員に! 果ては外地不穏分子の監視、鎮圧にも! 一部法人に限り武装改造も承り〼』**
 はた、と有効な反論を思いついて勇は視線を戻した。
「死ぬか死なないかの危険を乗り越えることで徴兵されても怖気づかないし、実社會でも活躍できるんだ。うちの部は完全就職で有名でもある」
「そういうものかしら」
 ちょうど電車が野田駅で停車したので、和子は持ち前の大和撫子然とした黒髪をなびかせて勇の脇を通り過ぎた。家まで送るよ、と申し出かけたがまるで予知でもしたみたいに先手を打たれた。
 気まずくなって視線をそらすと、電車内の液晶画面に投影された広告が目に入った。(男女で一つ、性別は二つ、子供は三人 帝国家庭庁)ちょうどそれが入れ替わって、新しい広告が表示される。
**『三菱重工の最新無人航空機……二四時間無給で働く警備員の代わりに! 町内會の見回り要員に! 果ては外地不穏分子の監視、鎮圧にも! 一部法人に限り武装改造も承り〼』**
 生え際の後退した男性の姿が目立つ車内をつと見回して、勇はなんとか有効な反論を思いついた。
「今は徴兵に行ける人手が少ないみたいなんだ。帝國を支えてくれた年長者を守るには、強くたくましく、五体満足の若者が必要なんだ」
「でもそれって、なんだかいいように使われているみたいだわ」
 和子も車内を見て言った。
「おれには社會のことは解らないよ。だけど、和子だって弱い男なんて厭だろう」
「まあ、それはそうだけど……」
 ちょうど電車が野田駅で停車したので、和子は口をつぐみ持ち前の大和撫子然とした黒髪をなびかせて勇の脇を通り過ぎた。家まで送るよ、と申し出かけたがぴしゃりと先手を打たれた。
「今日は送ってもらわなくていいわ。勇さんの家族が英雄の凱旋を待ちわびているでしょうから」
 そう言い残すと、華奢で可憐な身体が扉の向こうに吸い込まれていくように消えていった。躍起になって反論したので怒らせたか、と彼は不安を抱いたがしかし、またぞろ入れ替わった広告を見て気持ちを奮い立たせた。(権利と義務は表裏一体! 徴兵にはなるべく早く応じませう! 大阪市男子道徳課)
 所詮、女の子には解らないことだ。死線のぎりぎりを見極める攻防、盤面を見通して敵を征服し尽くした時のえもしれぬ高揚感。銃撃を加えた相手が地に伏した際の確かな手応え。こんな実感の伴う競技は他にありえない。そうして先んじて軍人精神の端に触れた者のみが、徴兵されてもただのいち歩兵ではなく幹部候補生相当の扱いで外地の各方面に配属されていくのだ。本職として軍人にならなくてもその精神は社會の至るところで実力を発揮する。それは、汗水を垂らして命を危険に晒しているからこそ得られる能力だからだ。戦争部に入部できない婦女子方とはそもそも相容れない。

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