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@ -236,7 +236,7 @@
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なだらかな傾斜がついている清潔な地面を見繕い、そこで僕たちは野営を始めた。必要なものは背嚢に全部入っていた。いかに現在の地上が温暖化しているとはいえ、夜間には氷点下を下回る。作業服より分厚い素材で作られた寝袋に入り込むと一転、身を切る寒風が遮られて全身が温まった。
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「適当な時間で交代だからな。二人してねんねしていたら襲われかねない」
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寝袋を器用に巻きつけて身体の自由と防寒を両立させながら彼が言った。手元には早くも電動銃の鈍く光るチャージライトが灯っている。
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「本当にそんなことあるのかな、競合他社のやつらだって眠いんじゃ」
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「そんなことあるのかな、競合他社のやつらだって眠いんじゃ」
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自力で眠るのも起きるのも数百年ぶりの僕にしてみれば、そんな不確かな挑戦はしないに越したことはなかった。だが彼は頑として腹ばいになって傾斜に電動銃のバッテリーマガジンを突き立てた。
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「むしろ油断ならない。夜勤<ナイト・シフト>の連中がいるかもしれない」
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「夜勤<ナイト・シフト>?」
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それはすごい、と率直な感想を抱いた。タングステンは軽量かつ高密度な金属素材なので、武器にも工具にも応用できる。導電性や耐熱性にも優れているから電子部品にも使える。シェルターにあって損はない資源だ。
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「現物を見ないことにはなんとも言えんな」
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変わらず銃口を突きつけたままではあったが、同僚の口ぶりは格段に柔らかくなった。相手もそれを察したに違いない。
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イエローの二人組は呼びかけに素直に応じて背嚢からタングステンの欠片を取り出した。手渡された銀色の塊をまじまじと見つめてから、HID6は僕に見せた。「これは本当にタングステンで間違いないか」僕はその金属の極端な重さと手触り、叩いた時の感触を慎重に調べてから答えた。
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イエローの二人組は呼びかけに素直に応じて背嚢からタングステンの欠片を取り出した。手渡された銀色の塊をまじまじと見つめてから、HID6は僕に見せた。「これはタングステンで間違いないか」僕はその金属の極端な重さと手触り、叩いた時の感触を慎重に調べてから答えた。
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「正確には分からない。でも、可能性はある。アルミやステンレスならもっと軽い」
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「鉄やニッケルだとしたら?」
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僕は冷静に首を振って言う。
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考えるより先に本能が回答を拒否した。状況から想像すればおのずと答えが分かってしまう。吐き気がしてきた。
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「おれたちだって競合他社のやつらを減らせるんだ。この銃はそのためにある。まさか瓦礫をどかすためだと本気で思っていたのか」
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「今まで、何回、こんなことを?」
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なにかしゃべっていないと本当に吐いてしまいそうだったので聞きたくもない質問をしてしまった。
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なにかしゃべっていないと吐いてしまいそうだったので聞きたくもない質問をしてしまった。
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「さあ……おれはA評価しか取ったことがなくてね」
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皮肉にも、帰りの道のりは快適だった。死んだイエローたちは電気で動く二人乗りのバイクを近くに隠していて、それに乗って帰ったからだ。HID6は後部座席にまたがる僕に、エンジンの駆動音や風切り音に負けない大声で叫んだ。
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「こんなもの、おれたちは持っちゃいねえ! そうだろ!? だが他社の連中は持ってる! おれたちが持っていない良いものを持ってやがる! これでおれたちがうまくやれていると思うか!? ええ? 殺さずに勝てると思うか?」
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