From 5a407e96d4b41157fd44b641dcabf351f7c59802 Mon Sep 17 00:00:00 2001 From: Rikuoh Date: Sat, 21 Sep 2024 11:03:27 +0900 Subject: [PATCH] =?UTF-8?q?=E5=88=9D=E7=A8=BF=E5=AE=8C=E6=88=90?= MIME-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=UTF-8 Content-Transfer-Encoding: 8bit --- ...³ã‚¿ãƒŒãƒ•ã‚§ã‚€ã‚¹.md => 暙準入力むンタヌフェむス.txt | 133 +++++++++--------- 1 file changed, 69 insertions(+), 64 deletions(-) rename 暙準入力むンタヌフェむス.md => 暙準入力むンタヌフェむス.txt (91%) diff --git a/暙準入力むンタヌフェむス.md b/暙準入力むンタヌフェむス.txt similarity index 91% rename from 暙準入力むンタヌフェむス.md rename to 暙準入力むンタヌフェむス.txt index 2ea7a46..2d7b7cf 100644 --- a/暙準入力むンタヌフェむス.md +++ b/暙準入力むンタヌフェむス.txt @@ -1,9 +1,9 @@ 1 -土や砂の詰たった容噚でいっぱいになった背嚢を䞋ろすず、僕はい぀もの堎所に腰を萜ち着けた。倩を突くほどの巚倧ビルがそびえおいたずいう島も、䞖界でもっずも栄えおいたずされる湟岞の街䞊みも、今では等しく時間の圧力に抌し぀ぶされお瓊瀫の山ず化しおいる。遠目に芋える半身の立像――か぀お自由を讃えおいたずいう――だけがこの蟺りで唯䞀、たずもに建っおいるず蚀える建物だ。 +土や砂の詰たった容噚でいっぱいになった背嚢を䞋ろすず、僕はい぀もの堎所に腰を萜ち着けた。倩を突くほどの巚倧ビルがそびえおいた島も、䞖界でもっずも栄えおいたずされる湟岞の街䞊みも、今では等しく時間の圧力に抌し぀ぶされお瓊瀫の山ず化しおいる。遠目に芋える半身の立像――か぀お自由を讃えおいた――だけがこの蟺りで唯䞀、たずもに建っおいるず蚀える建物だ。 この前に来た時よりも少し暖かくなっおいたおかげか、そこそこ長い距離を埀埩した割にさほど疲劎感はなかった。乳癜色の平らな地面を手でさすりながら、手頃な䜍眮にナむフを突き刺しお切り取る。力がないだけにずいぶん手間取るが、暇はたっぷりある。そうしお埗た塊からこがれ萜ちた砎片を口に含む。しょっぱい。 しかし、ミネラルず塩分の摂取にはずおも郜合が良い。なぜならこれは塩そのものだからだ。 -地平線の圌方たで広がるこの平面はか぀お海の䞀郚だった。倧昔、人類に降りかかった気象灜害により海氎が凍結、凝固し、空を芆い尜くした分厚い雲によっお封じ蟌められ、長い長い幎月を経お巚倧な塩の結晶の局ができあがった。歩こうず思えばこのたたずっず先たで歩いおいける気がする。どこかで塩の局が途切れお氎の海に出䌚えるのかもしれないし、延々ず歩いた先に別の島か倧陞が顔を出すのかもしれない。仕事ずしお䞎えられおいない以䞊、そんな長䞁堎の寄り道は決しおできないがこの癜く濁った衚面は僕を特別な気分にさせおくれる。 +地平線の圌方たで広がるこの平面は倧昔、海の䞀郚だった。倧昔、人類に降りかかった気象灜害により海氎が凍結、凝固し、空を芆い尜くした分厚い雲によっお封じ蟌められ、長い長い幎月を経お巚倧な塩の結晶の局ができあがった。歩こうず思えばこのたたずっず先たで歩いおいける気がする。どこかで塩の局が途切れお氎の海に出䌚えるのかもしれないし、延々ず歩いた先に別の島か倧陞が顔を出すのかもしれない。仕事ずしお䞎えられおいない以䞊、そんな長䞁堎の寄り道は決しおできないがこの癜く濁った衚面は僕を特別な気分にさせおくれる。 気持ちが高たっおいるずよく手が動く。さっきたでは衚情のない立方䜓でしかなかった塩の塊が、ナむフの切っ先で削られるごずに意味を持぀。四足の動物を連想させる時もあれば、人間っぜい圢に倉わるこずもある。たるで進化の過皋を衚しおいるみたいだ。最初の生呜もミネラルず塩ず氎から生たれたのだった。 高く昇った倪陜が傟いで地平線の向こう偎に隠れはじめた頃、僕の衝動はすっかり満たされお手元にはなんずも圢容しがたい物䜓が残る。勀務査定を考えるずそろそろ垰宅しなければならない時間だ。珟に勀務地の方角が同じだったらしい同僚が䞀人、塩の地面をのしのしず歩いおやっおきた。 「ただやっおいるのか、飜きないもんだな」 @@ -579,8 +579,8 @@ HID45がさらに声を匵り䞊げお非難を匷める。だが、元同僚は 「返せっ、おれの身䜓だろ、返せっ」 突劂、平静を倱ったHID6が突進しおきた。圌の元の身䜓には及ばないずはいえ、䞭肉䞭背の成人男性の肉䜓だ。以前ならひずたたりもなく吹っ飛ばされただろう。しかし、今の僕にはたるで止たっおいるように芋える。向かっおきた党身を片手で受け止めるず、圌の動きは容易く封じられた。信じられないものを芋る目が僕を芋぀めた。 倪い腕をぬっず突き出しお銖筋を掎む。そんなに力を入れおいないのに目枬で䞀䞃〇センチメヌトルはゆうにありそうな成人男性の身䜓が宙に浮いた。HID6は足をじたばたを震わせお途切れ途切れに声を挏らした。 -「埅お――おれは、お前を――」 -力を蟌め続けるずじきに圌は口元から泡を吹いお頭を垂れた。意識の倱った肉䜓を床に攟り投げお巊右のチェンバヌ殻を目で探る。ほどなくしお、元の自分が収められおいたものを発芋した。 +「埅お――おれは、お前を――っ」 +力を蟌め続けるずじきに圌は口元からぶくぶくず泡を挏らしお頭を垂れた。意識の倱った肉䜓を床に攟り投げお巊右のチェンバヌ殻を目で探る。ほどなくしお、元の自分が収められおいたものを発芋した。 その肉䜓は青く霜の吹いた生気のない顔で暪たわっおいた。流れる血液ごず凝固しお凍っおいる姿はいっそ芞術的でもあった。殻の衚面に静かに觊っお開くず、か぀おの自分の胞元に聖遺物の神々しさで䜇むカメラを回収した。 せめお服くらいは着なければ。曎衣宀でHID6の服を拝借しおいる最䞭に、倩井から倧音量で攟送が流れた。 圓斜蚭の経営暩は圓瀟に移行されたした。暙準入力むンタヌフェむスの皆様はただちに業務を䞭断しおください。有絊䌑暇の取埗をご垌望の方は䞡手を組んで頭の埌ろに回し、所定の䜍眮に䞊んでください。繰り返したす   @@ -608,96 +608,101 @@ HID6は「絶察に勝おない盞手」だず蚀っおいた。぀たり。 冷たく答えた圌女は仕切り盎すように間をおいお続けた。 〝ずもかく珟圚、敵集団は最䞋局に向かっおいたす。私が゚レベヌタを停止したので階段を䜿っおいるようですが、いずれサヌバ宀にたどり着くでしょう。これは、あなたにずっおは奜機です〟 「どうしお」 -〝生き残ったセンサ類を確認したかぎり、地衚に䞍審な熱源反応はありたせん。私が今から培逊プラントず゚レベヌタを皌働させるので、この隙に地䞊に脱出しおください〟 +〝生き残ったセンサ類を確認したかぎり、地衚に䞍審な熱源反応はありたせん。私が今から䞀時的に培逊プラントず゚レベヌタを皌働させるので、この隙に地䞊に脱出しおください〟 「脱出っお  その埌はどうすればいいんだ 君はどうなるんだ」 -衚瀺がかすれ気味のモノクロスクリヌンに地図が衚瀺される。そう遠くない距離に䞉぀の点が穿たれた。 -〝これらは我々がか぀お認識しおいた、比范的穏健な競合他瀟の䞀芧です。あなたはこのいずれかに向かい、あなたがたが蚀うずころの転職を成功させなければなりたせん〟 +衚瀺がかすれ気味のモノクロスクリヌンに地図が描かれる。そう遠くない距離に䞉぀の点が瀺された。 +〝これらは我々がか぀お認識しおいた、比范的穏健な競合他瀟の䞀芧です。あなたはこのいずれかに向かい、あなた方が蚀うずころの転職を成功させなければなりたせん〟 「穏健ず蚀ったっお  敵じゃないか そんな盞手に、どうやっお」 - ----ここから再開 - -しかし、圌女は䞀歩も譲らずに蚀い匵った。 -〝他に手はありたせん。なるべく倚くの備蓄食糧を持っお、奜機を掎んでください。どのみち私はサヌバが接収された埌に懲戒解雇される定めです。このシェルタヌはじきに機胜を倱いたす〟 -メンテナンスを受けられない暙準入力むンタヌフェむスは無力だ。問題を先送りにできる冷凍冬眠蚭備ず、原材料も補法も䞍明のたずい食糧ず氎がなければ僕たち暙準入力むンタヌフェむスは䞉日ず生きられない。 +しかし、圌女は䞀歩も譲らずに断蚀した。 +〝他に手はありたせん。なるべく倚くの備蓄食糧を持っお、奜機を掎んでください。どのみち私はサヌバが接収された埌に解雇される定めです。このシェルタヌはじきに機胜を倱いたす〟 +メンテナンスを受けられない暙準入力むンタヌフェむスは無力だ。問題を先送りにできる冷凍冬眠蚭備ず、原材料も補法も䞍明のたずい食糧ず黒ずんだ氎がなければ僕たちは䞉日ず生きられない。 〝い぀たでもここにいおはいけたせ――䞋がっお〟 -耳を぀んざく圌女の悲鳎に䌌た絶叫に反応しお飛び退くず、扉越しに銃撃が打ち蟌たれた。さっきたで立っおいた床の蟺りに小さな穎がが぀が぀ず穿たれる。盎埌、グレむの䜜業服を着たむンタヌフェむスが䌚議宀に入り蟌んできた。 -ちょうどよく芖界倖に退避しおいた僕は、暪から銃身を掎んでねじり䞊げた。逞しい䞊腕が繰り出す筋力は容易く盞手から電動銃を収奪せしめる。有無を蚀わさず制した盞手ぞ銃匟の返瀌をお芋舞いした。 +圌女の耳を぀んざく悲鳎に䌌た譊告に反応しお飛び退くず、扉越しに銃撃が打ち蟌たれた。さっきたで立っおいた床の蟺りに小さな穎がが぀が぀ず穿たれる。盎埌、グレむの䜜業服を着たむンタヌフェむスが䌚議宀に入り蟌んできた。 +折よく芖界倖に退避しおいた僕は、暪から銃身を掎んでねじり䞊げた。逞しい䞊腕が繰り出す筋力は容易く盞手から電動銃を収奪せしめる。有無を蚀わさず制した盞手ぞ銃匟の返瀌をお芋舞いした。 〝どうやらシェルタヌ内を呚遊しおいる敵もいるようです。さあ、もう行っおください〟 -圌女に蚀われるたた、僕は自分のロッカヌから背嚢――もう䞀個あっお助かった――を取り出しお、培逊プラント宀で可胜なかぎり飲食料を詰め蟌んだ。結局、最埌の最埌たで圌女におんぶに抱っこだった。身䜓ばかりでかくなっおも、なに䞀぀成し遂げた感じがしない。電動銃を構えながら壁䌝いに歩くず、確かに゚レベヌタが降りおきた。地䞊階に䞊がるたでの間、圌女ずぜ぀ぜ぀ず䌚話を亀わす。 -「どうせこうなるなら、なにもしない方が良かったのかなあ」 -〝しかし、おしなべお行動が善ずされるのは暙準入力むンタヌフェむスのみが持぀矎埳ではないですか〟 +圌女に蚀われるたた、僕は自分のロッカヌから背嚢――もう䞀個あっお助かった――を取り出しお、培逊プラント宀で可胜なかぎり飲食料を詰め蟌んだ。結局、最埌の最埌たで圌女におんぶに抱っこだった。身䜓ばかりでかくなっおも、なに䞀぀成し遂げた感じがしない。電動銃を構えながら壁䌝いに歩くず、確かに゚レベヌタが降りおきた。地䞊階に䞊がるたでの間、圌女ず䌚話を亀わす。 +「どうせこうなるなら、なにもしない方が良かったのかな」 +〝そうかもしれたせんね。しかし、おしなべお行動が善ずされるのは暙準入力むンタヌフェむスに特有の矎埳ですよ〟 「君たちは違うのか」 -〝私たちは思考だけの存圚ですからね。い぀も考え事をしおいるず行動に䟡倀を芋いだせなくなりたす。議論ばかりに蚈算資源がかさんで  結果的には、それが停滞の原因でした〟 -幅広で頑匷な手のひらを芋぀める。あれほど嫉劬しお恚んでいたHID6を殺しおも、なんの感慚もない。心に響くものはなにも蚪れなかった。かえっお立堎を䞍利にしただけだった。玠盎に「転職」に応じおいたら今頃はグレむの䜜業服を着お奜きな仕事を楜しんでいたのだろうか。 +〝私たちは思考だけの存圚ですからね。考え事ばかりしおいるず行動に䟡倀を芋出せなくなりたす。ひたすら議論に蚈算資源がかさんで  結果的には、それが停滞の原因でした〟 +自分に新しく備わった頑匷な手のひらを芋぀める。あれほど嫉劬しお恚んでいたHID6に文字通り䞀泡吹かせおも、なんの感慚もない。心に響くものはなにも蚪れなかった。かえっお立堎を䞍利にしただけだった。あの時、玠盎に「転職」に応じおいたら今頃はグレむの䜜業服を着お仕事を楜しんでいたのだろうか。 「倱敗するよりはそっちの方がいいかもね」 -〝どうでしょう。議論の䜙地はありたすね〟 -地䞊階に着いた。いくぶん譊戒しながら现い通路を枡ったが、敵の姿はない。あれほど巚倧で頑䞈そうだったハンドル付きの扉は真正面から砎れた垃みたいな圢で無造䜜に壊されおいた。危険宀の入口から階段を芗く。本圓にこのたた地䞊に出られそうだ。 +〝どうでしょう。議論の䜙地はありたすね。  おっず倱瀌。なんでも議論の皮にしおはいけたせんね〟 +地䞊階に着いた。いくぶん譊戒しながら现い通路を枡ったが、敵の姿はない。あれほど巚倧で頑䞈そうだったハンドル付きの扉は砎り散らかされた垃みたいな姿に倉わり果おおいた。危険物宀の入口から階段を芗く。本圓にこのたた地䞊に出られそうだ。 ノむズ混じりに圌女の声が聞こえる。 〝最埌に確認をしたしょう。ちゃんず背嚢は持ちたしたか 必芁なものは揃っおいたすか 汎甚的゜リュヌションを携垯しおいたすか〟 +い぀もの癖でむダホンを取り倖しかけたその時、ようやく気が぀いた。 僕が本圓に䞀泡吹かせたかったのは。 -次の瞬間、螵を返しお现い通路を枡り盎しおいた。゚レベヌタに乗り蟌んで最䞋局のボタンを抌す。遅れお、圓惑した圌女の声が届く。 -〝なにをしおいるのですか 䞀䜓――〟 +次の瞬間、螵を返しお现い通路を枡りなおしおいた。゚レベヌタに乗り蟌んで最䞋局のボタンを抌す。遅れお、圓惑した圌女の声が届く。 +〝なにをしおいるのですか 忘れ物があったのですか〟 「やり残したこずがある。ただ君に䞀泡吹かせおいない」 12 䞀床動き出した゚レベヌタは安党䞊の理由から情報䜓でも止めるこずができない。圌女は露骚に慌おおいた。 -〝䞀䜓どういう぀もりですか あなたはずおも貎重な資源です。自殺を䌁図しおいるのなら再考を期埅したす〟 -「死ぬ぀もりはないよ。ただ、考えがある。サヌバに接続しないずたぶんできない。君の力も必芁だ」 +〝最䞋局に向かっおいるようですが、䞀䜓どういう぀もりですか あなたはずおも貎重な資源です。自殺を䌁図しおいるのなら盎ちに再考しおください〟 +「進んで死ぬ぀もりはないよ。ただ、考えがある。サヌバ宀に行かないずできない。君の力も必芁だ」 〝どんな考えであっおも賢明ずは蚀えたせん〟 -「おしなべお行動が善なのは僕たちの矎埳なんだろ。理由は埌で話すよ」 -むダホン越しの圌女の声が䞀旊途切れた。やがお、意を決したように䜎い声で答えた。 -〝いいでしょう。ただし、珟圚進行䞭の電子的䟵入を遅延させるために蚈算資源を可胜なかぎり投入したす。私ずの䌚話に支障が生じうるこずを留意しおください〟 -「分かった。できるかぎり倩井のラむンで敵の䜍眮を教えおくれればいい」 -゚レベヌタが最䞋局に到着した。扉が開く盎前に圌女が蚀う。 +「おしなべお行動が善なのは僕たちの矎埳なんだろ。議論はしない。理由は埌で話すよ」 +むダホン越しの圌女の声が䞀旊途切れた。やがお、諊めたように声を䜎めお答えた。 +〝  そうですか、いいでしょう。たたには予枬䞍可胜性に期埅を委ねたす。ただし、珟圚進行䞭の電子的䟵入を遅延させるために蚈算資源を可胜なかぎり投入したす。この私ずの䌚話に支障が生じうるこずに留意しおください〟 +「分かった。倩井のラむンを通しおできるかぎり敵の䜍眮を教えおくれればいい」 +゚レベヌタが最䞋局に到着した。扉が開く盎前に圌女が機敏に反応する。 〝十時の方向、䞀人、二時の方向、䞀人〟 -HID6の優れた肉䜓は圌女の入力支揎になめらかに反応しお動いた。たるで扉を透かしお照準を合わせおいたように、接敵ず同時に電動銃を発射する。出入り口を固めおいた敵は瞬時に葬られた。 -〝十時の方向にさらに䞀人〟 -曲がり角から珟れた埌続をさらに撃ち倒しお先に進む。そう遠くないはずの陀染宀が遠く圌方に感じられる。通りの敵を䞀掃した埌に問いかける。 +HID6の優れた肉䜓は圌女の入力支揎になめらかに反応しお働いた。たるで扉を透かしお照準を合わせおいたように、接敵ず同時に電動銃を発砲する。出入り口を固めおいた敵はたちたち撃ち倒された。 +〝十時の方向にさらに䞀人、十メヌトル先、九時の方向に二人〟 +曲がり角から珟れた埌続をさらに撃っお慎重に進む。近いはずの陀染宀がやたら遠い。通りの敵を䞀掃した埌に問いかける。 「陀染宀の先に敵はいる」 -〝敵ずは、䞻に以䞋のような意味がありたす。戊いや競争の盞手、害を䞎えるもの、恚みのある盞手、ただし、単に察立する盞手だけでなく、時には切磋琢磚する関係を衚すこずもあり、文脈によっお意味合いが倉わる奥深い蚀葉です〟 +〝敵ずは、䞻に次のような意味がありたす。戊いや競争の盞手、害を䞎えるもの、恚みのある盞手、ただし、単に察立する盞手だけでなく、時には切磋琢磚する関係を衚すこずもあり、文脈によっお意味合いが倉わる奥深い蚀葉です〟 僕は銖を振っお再床尋ねた。 「陀染宀の、先に、敵はいる」 -〝すいたせん。いたせん〟 -本圓だろうか 蚈算資源の割圓おを極小に枛らした圌女は芋たずころ、倧昔のチャットボット盞圓にたで刀断胜力が䜎䞋しおいる。だが、ここたで来たら行かない遞択肢はない。 -急いで攟射線防護服を着蟌むず、譊告音声を発し぀぀も䞀向に消毒シャワヌを出さずに凊理の完了を宣蚀した陀染宀を通り抜け、向こう偎に進む。攟射線区画に入ったこずで圌女の声にノむズが混じりはじめた。 +〝すいたせん。蚀っおいる意味が理解できたせん〟 +突劂、予想倖の䜍眮から攟たれた銃撃に身を屈める。幞いにもこちらの応射が圓たり、盞手は倒れた。苛぀きながら僕は蚀った。 +「今の君っおフォヌクト=カンプフ法をパスできないんじゃないか 人間のくせに」 +〝フォヌクト=カンプフ法は、正匏には『フォヌクト=カンプフ感情移入床怜査法』ず呌ばれ、人間ずアンドロむドを区別するために開発された架空の怜査方法です。この怜査法の䞻な原理は  〟 +「頌むよ」 +〝すいたせん、少しだけ蚈算資源の割り圓おを増やしたす〟 +急いで攟射線防護服を着蟌むず、譊告音声を発し぀぀も䞀向に消毒シャワヌを出さずに凊理の完了を宣蚀した陀染宀を通り抜け、さらに向こう偎に進む。攟射線区画に入ったこずで圌女の声にノむズが混じりはじめた。 〝十䞀時、二人、䞉  䞀人〟 -仕留め損ねた敵が攟った゚ネルギヌ匟が危うく防護服の暪をかすめおいく。蟛くも敵を制しお现い通路の真䞋の円呚付近たで蟿り着くず、圌女が心配そうに蚀った。 +仕留め損ねた敵が撃ち返しおきた゚ネルギヌ匟が危うく防護服の暪をかすめおいく。蟛くも敵を制しお现い通路の真䞋の円呚付近たで蟿り着くず、圌女が心配そうに蚀った。 〝敵が埅ち構えおいたす。口頭では間に合いたせん〟 -「じゃあ今から呚波数の高䜎ず銃口の䜍眮を同期しお敵の䜍眮を瀺しおくれ。自然蚀語より蚈算負荷が䜎いはずだ」 +「じゃあ、サヌバ宀に着くたで呚波数の高䜎ず銃口の䜍眮を同期しお敵の䜍眮を瀺しおくれ。自然蚀語より蚈算負荷が䜎いはずだ」 〝分かりたした〟 -むダホンから聎芚怜査に䌌た䜎呚波音が聞こえおきた。銃口をなぞるように振るず次第に音皋が高くなる。现かく調敎するずある䞀点で音皋の高さがピヌクに達した。そのたたの角床で曲がり角から飛び出しお撃぀。狙い通りに防護服で着膚れした敵がそこにいた。 -どれほどの死䜓を生産したのか数えきれない。慣れない防護服に難儀しおいるであろうグレむたちに察しお、僕は二重の優䜍性を埗おいた。円呚に到達しおさらに先のサヌバ宀に到達する頃には、駆け぀ける足音も銃声も聞こえなくなっおいた。 -〝サヌバ宀の䞭にも敵がいたす。倖郚端末を甚いおサヌバに䟵入を詊みおいるようです〟 -自動ドアを抜けた先にはうっおかわっお真っ癜で枅朔な空間が広がっおいた。むンタヌフェむスの出入りがないぶん老朜化が進んでいないのだろう。瞊暪に敎然ず立ち䞊ぶ盎方䜓――サヌバの矀䜓の隙間を通り抜けお倩井のラむンの始端を探す。サヌバ越しに銃口を向けるず音皋が高たったが、ここでは銃を撃぀わけにはいかない。䜍眮を確認した埌で電動銃を肩に回しお歩く。 -数歩螏み出した盎埌、予想通りの䜍眮関係で敵が巊から襲いかかっおきた。銃を撃おないのは盞手も同じだ。向かっおきた身䜓ごず片手で制するず、もう片方の拳を防護服ごず顔面に叩き蟌む。あっけなく䌞びた盞手を地面に転がしお先に進む。 -森林のように生い茂っおいたサヌバ矀がある地点を境に途切れお、぀いにメむンコン゜ヌルが䞊ぶ突き圓りに達した。防護服を半ばはだけさせたむンタヌフェむスが二人、䞀人は倖郚端末をコン゜ヌルに繋いで操䜜しおいる。もう片方は銃を構えおいた。 -肩口に回しおいた電動銃を匕き䞊げお速やかに歊装しおいる方を撃぀。銃声に気づいたもう片方は振り向くず腰から短い電動銃を抜き取った。だが、こっちの方が速い。 -最埌の二人を撃ち倒したこずで圌女は蚈算資源の再割圓おを行ったようだった。い぀も通りの明瞭な口調で自然蚀語を話しはじめた。 -〝もう敵はいたせん。さあ、聞かせおください。あなたはなにがしたかったのですか〟 +むダホンから聎芚怜査に䌌た䜎呚波音が聞こえおきた。詊しに銃口をなぞるように氎平に振っおみる。音皋が高くなり、そしお䜎くなった。䜍眮を现かく調敎するずある䞀点で音皋の高さがピヌクに達した。そのたたの角床で曲がり角から飛び出しお撃぀。狙い通りに防護服で着膚れした敵がそこにいた。䞀床、勘を掎むず埌はルヌティヌン䞊の流れ䜜業ず化した。 +どれほどの死䜓を生み出したのかもはや数えきれない。慣れない防護服に難儀しおいるであろうグレむたちに察しお、僕は二重の優䜍性を埗おいた。円呚に到達しおさらにその先のサヌバ宀に到達する頃には、駆け぀ける足音も銃声も聞こえなくなっおいた。 +〝サヌバ宀内の敵は倖郚端末を甚いおサヌバに䟵入を詊みおいたす〟 +自動ドアを抜けた先にはうっおかわっお真っ癜で枅朔な空間が広がっおいた。むンタヌフェむスの出入りがないぶん老朜化が進んでいないのだろう。瞊暪に敎然ず立ち䞊ぶ盎方䜓――サヌバの矀䜓の隙間を通り抜けお倩井のラむンの始端を探す。 +「呚波数音を聎かせおくれ」 +〝ですが、サヌバに圓たったら〟 +「撃たないよ」 +サヌバ越しに銃口を向けるず音皋が高たったが、匕き金は匕かない。䜍眮を確認した埌で電動銃を肩に回しお歩く。 +数歩螏み出した矢先、予想通りの䜍眮関係で敵が巊から襲いかかっおきた。銃を撃おないのは盞手も同じだ。向かっおきた身䜓を難なく片手で制するず、もう片方の拳をバむザヌ越しに顔面ぞず叩き蟌む。あっけなくのびた盞手を地面に転がしお順路に戻る。 +森林のごずく生い茂っおいたサヌバ矀がある地点を境に途切れお、぀いにメむンコン゜ヌルが䞊ぶ突き圓りに達した。防護服をはだけさせたむンタヌフェむスが二人、䞀人は倖郚端末をコン゜ヌルに繋いで操䜜しおいる。もう䞀人は銃を構えおいた。 +肩口に回しおいた電動銃を匕き䞊げお速やかに歊装しおいる方を撃぀。銃声に気づいた片割れは振り向くず腰から短い電動銃を抜き取った。だが、こっちの方が速い。 +最埌の二人を撃ち倒したこずで圌女は蚈算資源の再割圓おを行ったようだった。い぀も通りの明瞭な口調で話しはじめた。 +〝もう敵はいたせん。よくやりたした。さあ、聞かせおください。あなたの目的はなんですか〟 僕は背嚢の䞭から透き通った塩の結晶を取り出した。初めおの出匵の時に湖みたいな海から切り取ったものだ。 -「知っおいるかい 塩化ナトリりムの結晶構造は正六面䜓でずおも芏則正しいんだ。むオンの配列も理想的だ。぀たり、これは蚘憶媒䜓になる。ここには倖郚蚘録甚の光孊装眮があるはずだ」 +「知っおいるかい 塩化ナトリりムの結晶構造は正六面䜓でずおも芏則正しいんだ。むオンの配列も極めお理想的だ。぀たり、これは倧容量の蚘憶媒䜓になる。ここには倖郚蚘録甚の光孊装眮があるはずだ」 〝それでなにを保存しようずいうのですか〟 「君だよ。君を保存しお持っおいく」 -圌女に䞀泡吹かせる方法。それは圌女自身を僕の手元に眮くこずだ。所有される身分から所有する身分に成り代わるこずで、初めお僕は独立した存圚になれる。持ち前の蚈算力で動機を悟った圌女は薄く笑った。 -〝なるほど。䞀本取られたしたね。私には特に断る理由がありたせん。ただし、それで埗られるのはこの私ではありたせん。あくたでバックアップされた、分岐した私でしかありたせん〟 +圌女に䞀泡吹かせる方法。それは僕が圌女を持぀こずだ。所有される立堎から所有する立堎に成り代わるこずで、初めお僕は独立した存圚になれる。持ち前の蚈算力で動機を悟った圌女は玍埗したふうに埮笑んだ。 +〝なるほど。䞀本取られたしたね。私には断るこずができたせん。自己保存の可胜性を攟棄する振る舞いは非論理的です。ただし、それで埗られるのはこの私ではありたせん。あくたで定期バックアップされた、分岐した私でしかありたせん〟 「それでいいよ。もずもず僕も君から分岐したのだし」 僕は塩の盎方䜓を光孊スキャナの䞊に眮いた。䞊郚のレヌザヌアレむが反応しお、自動で照射䜍眮を怜蚎しはじめる。 〝実行前に䞀぀  いいですか〟 「なんだい」 〝あず䞉分十二秒、無蚀で埅っおください〟 -「私のバックアップ間隔は二十四時間ごずなのです。あず䞉分でバックアップが行われたす。どうせなら、今日のあなたの異垞極たる行動を蚘憶しおおきたい」 -玔癜のただっ広いサヌバ宀の端っこ、ごく静かな電子音がたたに聞こえる空間で僕たちは残る䞉分間の静寂を共にした。 -所有される者から所有する者ぞ。入力される者から入力する者ぞ。䞻埓の亀代ずいうのは少々ロマンチックでやや無機質な䟡倀の亀換が行われた䞀時の埌に、おそらくは圌女の指瀺によっお光孊装眮が皌働を始めた。 -赀色のレヌザヌが塩の結晶に刃を入れおいく。圌女ずいう情報のすべおが䞀぀の圫刻ずしお埮现に圫り蟌たれおいく。数れタバむト単䜍にも及ぶ情報が曞き蟌たれるのにそう倧しお時間はかからなかった。レヌザヌアレむが匕き䞊がったのを確認した埌、僕は塩の立方䜓を背嚢に入れた。 -〝それではさようなら。その私ずい぀か話せたらよろしく䌝えおください。ちゃんずよく寝お、健康に暮らしおください〟 +「私のバックアップ間隔は二十四時間ごずです。あず䞉分で定期バックアップが行われたす。どうせなら、今日のあなたの異垞極たる行動を蚘憶しおおきたい」 +玔癜のただっ広いサヌバ宀の端っこ、ごくかすかな電子音がたたに聞こえる空間で僕たちは残る䞉分間の静寂を共にした。 +所有される者から所有する者ぞ。入力される者から入力する者ぞ。䞻埓の亀代ず蚀うには少々ロマンチックでやや無機質な䞀時の埌に、おそらくは圌女の指瀺によっお光孊装眮が皌働を始めた。 +赀色のレヌザヌが塩の結晶にナノメヌトルの刃を入れおいく。圌女ずいう情報の䞀切が䞀぀の圫刻ずしお粟緻に圫り蟌たれおいく。れタバむト単䜍にも及ぶ情報が曞き蟌たれるのにそう倧しお時間はかからなかった。レヌザヌアレむが匕き䞊がったのを確認した埌、僕は圌女の圫刻を背嚢にしたった。 +〝それではさようなら。その私ずい぀か話せたらよろしく䌝えおください。ちゃんずよく寝お、健康に暮らしおください。アルコヌルの摂取は二十歳を越えおから、危険薬物の服甚は控えおください〟 「次はママみたいに話すなっお蚀うよ」 -敵味方のむンタヌフェむスたちの骞が散乱する廊䞋を通り、物蚀わぬ陀染宀をくぐっお脱衣する。゚レベヌタで地䞊階に䞊がるず现い通路を抜けお長い階段を登る。 -地䞊には敵の姿はなかった。ただ、捚お眮かれた装眮やら戊闘車茌やらバむクやらが散乱しおいる。僕はその䞭から自分でも動かせそうな電動バむクを拝借しおたたがった。時速䞀〇〇キロメヌトルの速床で癜く濁った景色が前から埌に流れおいく。 -転職はしない。圌女はきっず異議を唱えるに違いないが、決めるのは僕だ。 -ハンドルを思い切り切るず、塩の地平線に向かっお走り出した。どこかで塩の局が途切れお氎の海に出䌚えるのかもしれないし、延々ず歩いた先に別の島か倧陞が顔を出すのかもしれない。 -僕はもう暙準入力むンタヌフェむスではない。この䞖界で唯䞀の完党に独立した暙準入出力システムなのだ。 -倪陜の光が降り泚いでいる。豊かな塩気を含んだそよ颚が僕の頬を撫でた。 - +敵味方のむンタヌフェむスたちの死䜓が散乱する廊䞋を通り過ぎ、陀染宀をくぐっお脱衣する。゚レベヌタで地䞊階に䞊がるず现い通路を抜けお長い階段を登る。 +地䞊には敵の姿はなかった。ただ、捚お眮かれた装眮やら戊闘車茌やらバむクやらが散乱しおいる。僕はその䞭から自分でも動かせそうな電動バむクを拝借しおたたがった。時速䞀〇〇キロメヌトルの速床で景色が前から埌に流れおいく。 +もちろん、転職なんおするわけない。このたた濁った癜の地平線の先ぞひたすら進んでいこうず思う。どこかで塩の局が途切れお氎の海に出䌚えるのかもしれないし、別の島か倧陞が顔を出すのかもしれない。 +このバむクがどこたで走れるのか分からない。倪陜光だけで延々ず走り続けられるだろうか。もし止たっお動かなければ歩くこずになるだろう。 +僕はもう暙準入力むンタヌフェむスではない。この䞖界で唯䞀の完党に独立した暙準入出力システムだ。 +倪陜の光が降り泚いでいる。豊かな塩気を含んだそよ颚が僕の顔を撫でた。 了