diff --git a/基本入力インターフェイス.txt b/基本入力インターフェイス.txt index 489df89..028ab63 100644 --- a/基本入力インターフェイス.txt +++ b/基本入力インターフェイス.txt @@ -386,7 +386,7 @@  あの老体のインターフェイスだ。あの時はかなり腰が曲がっていたのに、今ではほぼ垂直に背筋が伸びている。 「身体が……?」 「こないだ、仕事中に倒れてしまってね。私はもともと持病持ちだったから身体が先にだめになったのだろう。目が覚めたらチェンバー殻の中にいたよ――この身体でね」 - 理屈の上では脳が無事なら肉体は換えが効く。逆も然りだ。僕たちは伊達にモジュール化されているわけではない。どちらか余った方は互いに再利用可能な資源として扱われる。顔は変わったが、実質的に顔馴染みだと分かって気分が和らいだ。 + 理屈の上では脳が無事なら肉体は替えが利く。逆も然りだ。僕たちは伊達にモジュール化されているわけではない。どちらか余った方は互いに再利用可能な資源として扱われる。顔は変わったが、実質的に顔馴染みだと分かって気分が和らいだ。 「運が良かったね。新しい身体の調子はどう?」  老体だったインターフェイスは防護服で膨れた腕を緩慢に振り回して答えた。 「多少ぎこちないが悪くはないね。少なくとも今の君よりは元気だ」 @@ -395,7 +395,7 @@  すると、同僚は床に置いてあった作業道具を手に取り、実に魅力的な提案をしてくれた。 「では私と交代しよう。君は上の階の方をやりなさい」 「ほんと? どうもありがとう」 - 率直に感謝の気持を表明する。いっそこの場で防護服を脱ぎ散らかしたくてたまらなかったところだ。 + 率直に感謝の気持ちを表明する。いっそこの場で防護服を脱ぎ散らかしたくてたまらなかったところだ。 「私の新しい身体よりずっと若いのにこんな仕事をさせるのは忍びなくてね。なにか事情があるんだろうけども」  曖昧な問いかけに、同じくらい曖昧な会釈で返してやり過ごす。すれ違いざま、ピンと張った背中が振り向いた。 「まあ、仕事をする気があるだけいい。さっきあっちで、若い連中――あんたほどじゃないが――なにやらぺちゃくちゃしゃべっていてね。ああいうのは良くないね」