diff --git a/content/post/test.md b/content/post/test.md new file mode 100644 index 0000000..44cffdc --- /dev/null +++ b/content/post/test.md @@ -0,0 +1,21 @@ +--- +title: "巨大質量に引きずられて" +date: 2023-12-15T19:55:11+09:00 +draft: true +tags: ['poem'] +--- + +先日、なんの前触れもなくThreadsがFediverseに接続された。当初の宣伝以来、音沙汰がなかったMetaの分散型SNS参入は一応これで実現のものになったと言える。まもなく全世界1億人のユーザが我々フェディーバシアン(Fediverseにいる人々の、通称)の一員に加わるのだ。 + +Fediverseは孤独な星系である。光よりも速く自転し、自身をも燃やし続けながら公転する遠く離れたXと呼ばれるたった一つの天体の騒々しさと比べたら、ここいらの星々はまるで止まっているように見える。何百年もかけてようやく最初の自転を終える惑星もあれば、一回目の公転すらままならず雲散霧消する惑星もある。 + +なにしろ中心がないものだからそもそも公転の概念からして怪しい。我々は一体なにを頼りに回っているのか。どこへ行こうとしているのかまるで見当がつかない。ただひたすら、自分のペースで等速運動を繰り返している。仮に昨日と今日を入れ替えたところで、傍目からはそう代わり映えしない。 + +そんな我々もたまに惑星同士がうまい具合に隣接する時がなくもない。その瞬間、どこかにいつか届けば儲けものと放った電波が互いに結びつき、にわかに活気づいて一時の交流を楽しむ。さらに調子が良ければ三連星や四連星を構成する場合もありえるだろう。だが、互いに気まぐれな軌道を描いているゆえ、いつまでも引かれ合っているとは限らない。 + +そこへ、巨大質量を備えた惑星が超速度を伴って星系に飛び込んでくる。Threadsだ。そのあまりの重力の強さに周囲の惑星ともども引きずられ、当初描く予定だった軌道は大いに乱れてビー玉のごとく銀河の海原を転がっていく。にわかに加速度を与えられた惑星たちがたちまちThreadsに追いすがる。 + +そうして重力圏に捉えられたいくつかの惑星はいつしかThreadsを中心に周回しはじめる。あやふやで緩慢だった自転は強大な引力に律されて定まった期間の公転周期を得る。おのずと、それらの惑星たちは互いに常に隣接しあい、一時の交流は永遠のものとなる。孤独でとりとめのない公転の道すがらに出くわした他の惑星も、ひとたび彼らの重力に引かれれば二度と戻っては来られない。 + +何年かした後に、幾千の惑星で器用にフラフープをしながらThreadsが言う。**「ようこそFediverseへ!」** Fediverseはすっかり賑やかになった。もう自分の決めた自転速度では回れないし、気づいたら公転の定義はThreadsを一周することに変わっていたけれど、それでもここはFediverseじゃないか。 +