diff --git a/content/post/コメディ専の彼.md b/content/post/コメディ専の彼.md index c0ce295..b4a83de 100644 --- a/content/post/コメディ専の彼.md +++ b/content/post/コメディ専の彼.md @@ -17,7 +17,7 @@ tags: ['diary'] 一体、彼ほどの人物はどんな人生を歩むのか。人々の大方の予想を裏切り、イケイケの起業家でもインフルエンサーでも女のヒモでもなく、全然普通に不動産大手の営業マンとして働いている。昨年、子どもが産まれたとLINEで報告が来た。ちなみに彼の妻は転向させた元極左活動家でもなければ、僕の知る大学内のいずれかの女性でもなく、きっちりお堅い社内交流で知り合った人らしい。 -彼は不定期に僕のブログや小説を読んでは感想をくれる。一例を挙げるとこんな感じだ。『まだ合同誌とかやってんだ笑笑(いくつかの絵文字)』つまり、今も相変わらずおちょくられている。そんなわけで僕は彼に誘われて会食に赴いた。たとえ残業続きでも家族サービスとジム通いを決して絶やさない完全無欠の彼の悩みは教育費だという。30歳にして一本越えの預貯金を持ち、資産運用をしていてもなお子息に十分な教育を受けさせるには心もとないと言う。 +彼は不定期に僕のブログや小説を読んでは感想をくれる。一例を挙げるとこんな感じだ。『まだ合同誌とかやってんだ笑笑(いくつかの絵文字)』つまり、今も相変わらずおちょくられている。そんなわけで僕は彼に誘われて会食に赴いた。たとえ残業続きでも家族サービスとジム通いを決して絶やさない完全無欠の彼の悩みは教育費だという。30歳にして一本越えの預貯金を持ち、資産運用をしていてもなお子息に十分な教育を受けさせるには心もとないとのことだ。 僕の方といえば、特にこれといった話はない。それなりに効率性の高い仕事にありつけて物書きをするのに不自由がなければ構わない。45分のランニングでぼちぼち10km以上走れるようになった、とささやかな自慢話を漏らすと、珍しく彼は素直に感想を言った。「マジか。俺はそこまで速くない。すげえな」そりゃあ、その分厚い大胸筋を揺らしながら走るのは辛かろうよ。彼は笑う。