From b48b8ab75426fefd1f261448139f32510b8b4488 Mon Sep 17 00:00:00 2001 From: Rikuoh Date: Wed, 10 Jul 2024 20:59:09 +0900 Subject: [PATCH] fix --- content/post/星新一をくれたお巡りさん.md | 2 +- 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-) diff --git a/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md b/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md index 57b3d18..19e7c4f 100644 --- a/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md +++ b/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md @@ -13,7 +13,7 @@ tags: ["diary"] その時、額から垂れた汗がぽつり、と紙面に落ちた。自分の顔で影ができた薄暗い紙の上に、さらに階調の濃い灰色の点描がぽつ、ぽつと穿たれる。いけない、これは図書館で借りた本だ。汚したら怒られる。半袖のほとんどない袖を無理に引っ張って額の汗を拭く。まだ遠い冬の氷上を想像しても夏の暑さはごまかせない。 -こんな田舎の通学路にもいくつか自販機があるとはいえ、一円もお金を持たない身分の僕には読めない文字で書かれた石板よりも価値がない。制服を着た中学生か高校生の子たちが得意げに小銭をじゃらじゃら言わせながら、いかにも甘くて美味しそうな冷えたジュースで喉を潤している様子を素直に羨ましいと思っていたのも昔の話だ。今や自販機も、中高生の子たちも、申しわけばかりの建物も、すべてが平坦な一枚板の背景に溶け込んでいった。 +こんな田舎の通学路にもいくつか自販機があるとはいえ、一円もお金を持たない身分の僕には読めない文字で書かれた石板よりも価値がない。制服を着た中学生か高校生の子たちが得意げに小銭をじゃらじゃら言わせながら、いかにも甘くて美味しそうな冷えたジュースで喉を潤している様子を素直に羨ましいと思っていたのも昔の話だ。今や自販機も、中高生の子たちも、申しわけばかりの建物も、すべてが平坦な一枚板の背景に溶け込んでいる。 だから僕は、歩きながら本を読んでいる。どうせ手に入らないのなら作り話の方がよほど面白い。僕にとっては百円玉も、まだ見ぬ異国のポンド硬貨も、現実には存在しないシックル銀貨も、面白いか面白くないかの差しかない。シックル銀貨はポンド硬貨より面白く、ポンド硬貨は百円玉よりはたぶん面白い。