From 725163543d0e0cb998a5439d2e115fbd21a60904 Mon Sep 17 00:00:00 2001 From: Rikuoh Date: Wed, 10 Jul 2024 21:06:26 +0900 Subject: [PATCH] fix --- content/post/星新一をくれたお巡りさん.md | 4 ++-- 1 file changed, 2 insertions(+), 2 deletions(-) diff --git a/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md b/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md index 19e7c4f..4579701 100644 --- a/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md +++ b/content/post/星新一をくれたお巡りさん.md @@ -11,7 +11,7 @@ tags: ["diary"] かといってそのぶん冬休みが東京の夏休み並に長くなるわけでもない。冬は冬で窓という窓が積雪に覆われていようとも、屋根の雪かきに駆り出されようとも断じて長い休みにはならない。良いところがあるとしたら自転車で行ける距離に小学生無料の市営スケートリンクがあること、そして僕は自分のスケート靴を持っているのでレンタル料金がかからないことぐらいだ。 -その時、額から垂れた汗がぽつり、と紙面に落ちた。自分の顔で影ができた薄暗い紙の上に、さらに階調の濃い灰色の点描がぽつ、ぽつと穿たれる。いけない、これは図書館で借りた本だ。汚したら怒られる。半袖のほとんどない袖を無理に引っ張って額の汗を拭く。まだ遠い冬の氷上を想像しても夏の暑さはごまかせない。 +その時、額から垂れた汗がぽつり、と紙面に落ちた。自分の顔で影ができた薄暗い紙の上に、さらに階調の濃い灰色の点描がぽつ、ぽつと穿たれる。いけない、これは図書館で借りた本だ。汚したら怒られる。半袖のほとんどない袖を無理に引っ張って額の汗を拭く。遠い冬の氷上を想像しても夏の暑さはごまかせない。 こんな田舎の通学路にもいくつか自販機があるとはいえ、一円もお金を持たない身分の僕には読めない文字で書かれた石板よりも価値がない。制服を着た中学生か高校生の子たちが得意げに小銭をじゃらじゃら言わせながら、いかにも甘くて美味しそうな冷えたジュースで喉を潤している様子を素直に羨ましいと思っていたのも昔の話だ。今や自販機も、中高生の子たちも、申しわけばかりの建物も、すべてが平坦な一枚板の背景に溶け込んでいる。 @@ -29,7 +29,7 @@ tags: ["diary"] 「実は事故があってね、いや、大した事故じゃないよ。ぶんぶんが――車が、交差点で衝突――ぶつかっただけだ」 -お巡りさんは小学生の国語力を測りかねている様子だった。幼児に対して使うような言葉を喋ったかと思えば改め、逆にやや難しい単語を使った後に訂正を繰り返したりした。少々居心地の悪さを感じた僕は、自分にとってちょうどよい語句が用いられた時に返事をすることで誘導を試みた。すると、次第にお巡りさんの言葉遣いは読書家の小学生に適した内容へと適宜修正された。 +お巡りさんは小学生の国語力を測りかねている様子だった。幼児に対して使うような言葉を喋ったかと思えば改め、逆にやや難しい単語を使った後に訂正を繰り返したりした。少々居心地の悪さを感じた僕は、自分にとってちょうどよい語句が用いられた時に返事をすることで誘導を試みた。すると、次第にお巡りさんの言葉遣いは読書家の小学生に適した内容へと修正された。 お巡りさんが語るには、ちょっとした交通事故が起こったらしい。双方ともに怪我はなく特に大事ではない。しかし車体はそれなりに損傷したため大金を払って修理しなければならない。そこで互いの過失割合が問題となる。先ほど紹介した通りここは田舎町、検証の助けになる気の利いたビッグブラザー(防犯カメラ)はなく、ドライブレコーダーは普及以前の時代である。