diff --git a/content/post/魔法少女の従軍記者.md b/content/post/魔法少女の従軍記者.md index bd6e790..d3b7a52 100644 --- a/content/post/魔法少女の従軍記者.md +++ b/content/post/魔法少女の従軍記者.md @@ -14,7 +14,7 @@ tags: ['novel']  しかし、私が予想していたどの台詞とも異なり、彼女は長いブロンドの髪の毛をわたわたとたくしあげてこう言った。額に汗を滲ませ、人間らしい焦りを見せた様子で。 「今、何時何分? たぶん、ギリ遅刻じゃないと思うんだけど」  結論から言うと、彼女が基地の天井を破壊して会議室に突っ込んだのは午前八時五九分、五五秒。遅刻五秒前だった。 - 彼女こそが、私の今回の取材対象だ。本作戦の要、国連軍指定魔法能力行使者、兼、映画女優。PR上の都合で我々報道関係者が『魔法少女』と呼んでいる人物との出会いだった。 + 彼女こそが、私の今回の取材対象だ。本作戦の要、国連指定魔法能力行使者、兼、映画女優。PR上の都合で我々報道関係者が『魔法少女』と呼んでいる人物との出会いだった。 --- @@ -33,7 +33,7 @@ tags: ['novel'] 「冗談みたいよね。大尉になったのってほんの三日前なのよ」  指揮系統に彼女を組み込む都合上、どうしてもそれなりの地位を与える必要性があったのだろう。小隊長程度の命令に左右されるようでは並外れた能力をいかんなく発揮できないし、かといって高級将校に堂々と楯突かれては計画の妨げになる。大尉相当に遇するのは理にかなっている。 「計算上は夏の間に大将になれますね」 - 笑ってくれた。いい感じだ。他にも引き出しは色々と用意してある。著名人のSNSはこまめにチェックしておかないといけない。以前は面倒くさかったそうだが、今時は手頃なプランのLLMツールにまとめて投げればイヤフォンで文字起こしの要約が聞ける。こうした大規模言語モデルの産物は”AI”などという尊大なブランディングネームの助けを借りつつも、我々の生活に溶け込んで久しい。 + 笑ってくれた。いい感じだ。他にも引き出しは色々と用意してある。著名人のSNSはこまめにチェックしておかないといけない。以前は面倒くさかったそうだが、今時は手頃なプランのLLMツールにまとめて投げればイヤフォンで文字起こしの要約が聞ける。こうしたLLM――大規模言語モデルの産物は”AI”などという尊大なブランディングネームの助けを借りつつも、我々の生活に溶け込んで久しい。  ”ハーイ、私はメアリーです。八歳の頃に魔法能力に目覚めました。たくさんの親族と仲良く暮らしています。父と母と四つ年下の妹もいます……。” 「ところで、ついさっきまではロサンゼルスにいましたよね。そっちでも記者連中に捕まっていたので?」 「そうね、映画の出演者インタビューに出てて」 @@ -610,7 +610,7 @@ tags: ['novel'] 「そういうふうに覚えられているのか」  やや詰問気味の眼差しを姉の方に投げかけると釈明が返ってきた。 「いや、私はちゃんと説明したつもりだけど」 -「お姉ちゃんの付き人だって」 +「お姉ちゃんの付き人だって聞いたよ」 「なんか含みがある表現だな」 「専属の従軍記者よ」  とても国家を手玉にとった戦略級兵器同士の会話とは思えない。隅々にまで床暖房が行き届いた暖かい部屋の中で、カジュアルな服装に身を包んだ二人の姿はどこからどう見ても長期休暇中の子どもそのものだ。