diff --git a/content/post/太巻きへの偏愛.md b/content/post/太巻きへの偏愛.md index 1803164..706a32a 100644 --- a/content/post/太巻きへの偏愛.md +++ b/content/post/太巻きへの偏愛.md @@ -7,7 +7,7 @@ tags: ['diary'] -節分である。世間では鬼を外に放逐せしめるべく豆をぶつける行事が主と捉えられているが、僕の中ではもののついでとばかりに売り出されている恵方巻きの方がよほど嬉しい。というのも、おおよそ太巻きと定義されうる万物が僕の好物に当てはまるからだ。正直、具の中身は割となんでも構わない。海苔と白米の懐は日本海溝よりも深い。 +節分である。世間では鬼を戸外に放逐せしめるべく豆をぶつける行事が主と捉えられているが、僕の中ではもののついでとばかりに売り出されている恵方巻きの方がよほど嬉しい。というのも、おおよそ太巻きと定義されうる万物が僕の好物に当てはまるからだ。正直、具の中身は割となんでも構わない。海苔と白米の懐は日本海溝よりも深い。 しかしリアルな伝統に裏打ちされた豆まきとは異なり、恵方巻きの依拠するバックグラウンドストーリーはだいぶ疑わしい。なんでも昔の関西地方にそういう風習があったとかなかったとかそんな具合らしいが、現実、恵方巻きがそこかしこで手に入る昨今の状況は誠に遺憾ながらセブンイレブンの商業的動機によるものに過ぎない。食品ロスも確かに問題だ。僕の胃袋に全部収められたらいいのに。 @@ -41,17 +41,17 @@ tags: ['diary'] 肝心の味はというと、まあ普通にキンパだ。学生の頃に初めて行った韓国で食べたキンパの味に衝撃を受け、大量に買い込んでは店員にカタコトの日本語でツッコまれたのも今は昔。令和の日本ではコンビニでもキンパが売られている。そういう意味ではありがたみは薄れてしまったものの、特別な日に作られたキンパなだけあって割に上等な具材が用いられている。 -このキンパの選択肢が浮上する前にかなりの種類の恵方巻きをカゴに入れてしまっていたので、やむなくハーフサイズに甘んじてしまったが次回はフルサイズを買ってもいいかもしれない。それにしてもこの頃の韓国フードの躍進ぶりは目覚ましい。昔はなにかとネット上で執拗に叩かれていて孤独な戦いを強いられたものだった。あの匿名掲示板の連中も今時分はキンパや辛ラーメンを食べてみたりしているのかな。 +このキンパの選択肢が浮上する前にかなりの種類の恵方巻きをカゴに入れてしまっていたので、やむなくハーフサイズに甘んじてしまったが次回はフルサイズを買ってもいいかもしれない。それにしてもこの頃の韓国フードの躍進ぶりは目覚ましい。昔はなにかとネット上で執拗に叩かれていて、僕はずいぶん孤独な戦いを強いられたものだった。あの匿名掲示板の連中も今時分はキンパや辛ラーメンを食べてみたりしているのかな。 ## ヒレかつ巻き -結論から言うと僕が一番好きな恵方巻きはヒレかつ巻きだ。その証拠に画像がない。今週は恵方巻きの話を書こうと思いついた時点で、フルサイズ二つぶんも用意してあったヒレカツ巻きを初手で食べ尽くしていたからだ。変わり種にしてもさすがにこれはどうなんだと訝しむ声もありそうだが、僕はここではっきりと言っておきたい。 +結論から言うと僕が一番好きな恵方巻きはヒレかつ巻きだ。その証拠に画像がない。今週は恵方巻きの話を書こうと思いついた時点で、フルサイズ二つぶんも用意してあったヒレかつ巻きを初手で食べ尽くしていたからだ。変わり種にしてもさすがにこれはどうなんだと訝しむ声もありそうだが、僕はここではっきりと言っておきたい。 数ある恵方巻きの中で、ヒレかつ巻きの潜在価値がもっとも高い。なぜなら買うと値段は安いのに、自分で作ろうとすると急に難易度が跳ね上がるからだ。きょうび、恵方巻きをホームメイドする試みは実施しつくされていて、もちろんイオンにも多くの材料が売られている。異国グルメのキンパでさえ作るのはそう難しくはない。 一方、ヒレかつ巻き。こいつはそうはいかない。兎にも角にもカツを揚げないことには始まらないが、まずそこからしてすでに面倒くさい。その揚げたてのカツをわざわざ常温程度に冷まさないといけないのも割に合わない。さらにはそうやって揚げたカツを、なんらかの工夫でもって太巻きの内径に適合させなければならないのだ。揚げる前に切ってもいいが計算が狂うとかなり貧相になる。 -ところがこのヒレかつ巻き。近所のイオンに併設されているとんかつ屋では500円ちょっとで売られている。最初に紹介した五福なんとやらが1400円くらいもしたことを考えるとまさに圧倒的なコストパフォーマンスだ。して、500円で十分に設計された商品が手に入るのに、なぜわざわざ自分で冷ます前提のカツを揚げる必要がある? +ところがこのヒレかつ巻き。近所のイオンに併設されているとんかつ屋では五百円ちょっとで売られている。最初に紹介した五福なんとやらが千四百円くらいもしたことを考えるとまさに圧倒的なコストパフォーマンスだ。して、五百円で十分に設計された商品が手に入るのに、なぜわざわざ自分で冷ます前提のカツを揚げる必要がある? しかもこのヒレカツ巻き。僕の知るかぎり節分の日でなければ手に入らない。全国のどこかには通年販売している地域があってもおかしくなさそうだが、少なくともさいたま・浦和の地ではとんと見かけた覚えはない。ゆえにヒレカツ巻きは僕にとって最高にめでたい恵方巻きであり、一年に一度しか食べられないレジェンドレア級の代物なのである。